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ユーロスペース。カンヌの60周年記念らしい。基本は映画の映画なのだが、オリヴェイラが空気を読まずにミシェルピコリにフルシチョフを演じさせてローマ法王にお腹を突かせるという大技を入れていておもしろ過ぎる。
製作がフランス映画だけあって、ほとんどの映画が映画館とは別にタバコ吸いまくり。ハリウッド映画と何が違うと言って、煙が違う。そのため、やたらと印象的。最初の映画は汽車が煙を吐きながら走ってくるわけで、映画には煙がつきもの。3本くらいは映画館の中で映画みながらタバコ吸いまくり。
チラシと映画の順序が違う。思い出しながら正しい順序に書きたいが微妙。
作家名は最期にクレジットされるので、誰が撮ったか考えながら観たり。
・レイモン・ドバルトンの夏の映画館
アラブ系の国なのか、映画館で映画が始まる。いい感じだったことだけは覚えている。
・北野武の素晴らしき休日
はりぼての映画館。左側に道路。男が来る。農業1枚、映画館に入る。キッズリターン。音楽が調子いい。フィルム切れる。フィルム燃える。北野武が映写技師。映画終わって、とぼとぼと帰宅。
音楽とセット。悪くはないけど、2番手に置かれたのがなんとなくわかる。
・JPとリュック・タルデンヌの暗闇
男が這っている。映画館の座席の間。手を伸ばす。バッグ。財布を抜こうとする。女、映画を観ている。バッグをまさぐり、男の手をつかむ。男の手を頬に当てる。
いまさんくらい。手を頬に当てるのが良いかな。
・ホウ・シャオシェンの電姫戯院
アヒルの映画となにかと愛染桂の3本がかかった映画館。高級な車。日本人の家族が下りてくる。とうもろこしを買ってもらう娘。とうもろこし屋の子供。映画館に入る。廃墟の映画館。映画が映る。
ムードの作り方がうまい。というか、文句なくうまい作家。
・テオ・アンゲロプロスの3分間
ジャンヌ・モローが美術館かな、に入ってくる。誰かいる? 人を配置した展示。舞台に向かってマルチェロ、と叫ぶ。朝目覚めて愛おしく感じたことを語る。
映画っぽい。映画だな。演劇としてもすぐれた。
・ナンニ・モレッティの映画ファンの日記
映画館の座席から頭。映画ファンのおしゃべりを始める。映画の話。トリュフォーの家庭は、英語の題名が浮気と団らん、でもイタリアでやったときは、妊娠なんて怖くない(というような印象をおれは受けたが、たぶん違う)だったんだ。アナスタシア。2才の子供の映画デビュー。30分後、ママはどこと泣き叫ぶ。ロッキーの最後の戦い。スタローンがジムに来る。パッパーパー、パパッパー。両腕を上げる。パッパーパー、パッパーパー。
ロッキー・ザ・ファイナル (特別編) [DVD](シルベスター・スタローン)
本当に映画好きなんだな、このおっさん。他の映画の言及は忘れたけど、足の親指と人さし指の長さと高貴さの関係とか。
・チャン・イーモウの映画をみる
人気投票でケン・ローチと人気を二分してた。村に映画が来るので子供がおおよろこび。始まるかと思うと映写技師が飯を食うところがスクリーンに影絵。PILのリッツ公演とか。村の娘と映写技師。始まると子供は寝ている。手堅い。
・イニャサトゥのアナ
カップルが映画を観てる。女、途中退席。映画館の外に出て煙草を吸う。男が後からやってくる。女、盲目。
映画っぽかった。
・アキ・カウリスマキの溶鉱炉
男たちが溶鉱炉で働いている。なんか、カウリスマキだなと感じる。仕事終わる。映画館。もぎりのおばさんと、警備のおっさん。カウリスマキの映画だ。おっさん、映写室に入る。資本主義と労働者の権利の映画。画面を食い入るように見入る工員たち。カウリスマキだ。
レ・フィルム・リュミエール DVD-BOX(オーギュスト・リュミエール)
カウリスマキの映画。それ以外のなにものでもない。
・デビッド・リンチのアブサーダ
映画館。巨大なはさみがスクリーンから飛び出している。見事な構図。会話。映画の進行と会話がシンクロ。踊る女、血まみれで倒れる男。(クローネンバーグだと思う)、惨劇を予想させる会話。(あ、なるほどリンチか)
リンチ、むちゃくちゃうまい。3分間でかっちり、映像もきっちり。
・コンチャロフスキーの暗闇の中で
8・1/2のポスター。すぐ戻りますの看板。おばさんが映画を観ている。後ろのほうでカップルが嬌声。映画終わる。おばさん涙をぬぐう。2番の電灯が切れている。映写技師、電気を直す。カップル、脚が上がっている。おばさん、窓口の看板を売り切れに変更。席に座る。8・1/2が始まる。
8 1/2 愛蔵版 [DVD](マルチェロ・マストロヤンニ)
カップルいらないじゃん。ニノ・ロータが良いので良いけど。
・ジェーン・カンピオンのレディバグ
映画館。太った女性の虫。掃除夫との戦い。ステージで踊る。踏みつぶされる。緑。流れている映画は女性2人と男の会話。
・オリヴィエ・アサヤスの再燃
カップル。忍び寄るアラブ人。バッグを盗む。電話が鳴る。
サスペンスはあるし、印象的でもあるけど。
・クロード・ルルーシュの街角の映画館
3つの数字。父が母を口説く。トップハット。いい加減にしないと大声を出すわよ。男、アステアに合わせてチークトゥチークを歌う。いい加減にしないと……、母は1960年に再度パリで出会う。アステアとハローと息子。あと、男と女もちょっと映す。
ルルーシュには良い印象はないが、アステアは素晴らしいし、アステアが映画だから、良い映画。
・ビレ・アウグストの最後のデートショウ
3人組が与太話。まじめそうな人が離れたところにいる。アラブ系の女性。デンマーク語はわからない。ミステリらしいセリフ。男、でたらめな恋愛映画として吹き替える。口説いているらしい。うるさい。3人組、怒る。通訳しても良いだろう。テヘランへ追い返せ。男支配人にナチがいると通報。支配人3人を追い出す。2人も映画を出る。男、帰ろうと言い、女は続きを観たいという。何度も見たが最後は結婚して終わる。ヘルメットを忘れたことに気づき、男がとりに行く。映画を観てしまう。女待っていると3人組が近づく。男、出てくると女がいないことに気付く。サスペンス。支配人が来て男を2階へ連れて行く。3人が女に通訳している。女、男に最後が結婚ってことはないようよ、と微笑む。
きれいにおちがつき、しかも良きコメディ。
・ユーセフ・シャヒーンの47年後
若者が批評家に無視されたことを怒る。そして47年後、舞台で人々にまじめにねばり強く続けるんだ、と説教をたれるシャヒーン。
大作家の作品だということはわかる。
・ラウル・ルイスの贈り物
盲目の神父と女性人類学者。なんちゃら族に映写機とラジオをプレゼントした。なんちゃら族を映したフィルム。映写機はばらばらにされた。ラジオもだ。そうよ、彼らはそうするの。それから2年後、彼らは木で映写機を作った。北部のなんとか族はそうするけど、彼らもそうなのね。次にラジオを作った。巨大なラジオだ。それはそうよ。そこで彼らは映画を映した。3秒。
圧倒的に映画な映画。なんの映画を映したかは忘れた。
・ラース・フォン・トリアの「職業」
蝶ネクタイの人々が映画を観ている。左のおっさんが右のスピルバーグかシッコの人みたいなおっさんに話かけまくる。おれは成功者だ。おれは8台の車を持っていて、毎日とりかえる。1台はとっておきだ。で、お前は何をしている。お前を殺す。ピックアックスで滅多打ちにする。飛び散る血しぶき。まわりの人たちのドレスも血に染まる。頭が半分へこんだ状態で黙って映画を観るようになった。めでたし。
ふーん。でも徹底的だからいいかな。
・ツァイ・ミンリャンのこれは夢
夢をみた。父がドリアンをむいてくれた。これは祖母だ(写真)。梨をよくむいてくれた。映画館。串刺しにした梨を後ろに差し出す老婆。後ろの男がそれを食う。家族が並んで映画を観ている。
見事な構図、落ち着いたナレーション、色の配置。チェン・カイコーかと思ったら、違った。うまい映画作家だなという印象。
・ガス・バン・サントのファースト・キス
くだらねぇ。
・ウォン・カーウェイの君のために9000キロを旅してきた
アルファヴィルを観る女性。
初見だが、すぐに(映っているのが東洋人だからというのもあるけど)これがカーウェイか、とわかった。ある意味、それだけだけど、大した才能だとは思う。
・アトム・エゴヤンのアルトー(2の本立て)
男と女のいる舗道。携帯でメール。返事。いかない。別の映画観ている。何見ている? アジャスター。裁かるるジャンヌ。アルトー。
2つの映画館、2つの映画、携帯でメール。
裁かるゝジャンヌ クリティカル・エディション [DVD](ルイーズ・ルネ・ファルコネッティ)
・ポランスキーのエロチックな映画
エマエマヌエルー、わたしはヌーエルー。老夫婦、集中してみている。ストッキングに手がかかる。後ろで大声で呻く浮浪者風の男。ついにおばあさん、集中できないと怒る。おっさん、まだ見ていたいが受付の女性に苦情を言う。女性、浮浪者見て、支配人を呼びに行く。支配人、男に近寄り、切符を見せろ。男、うめきながら切符を渡す。支配人、これは2階の切符だ。男、そうだ2階の切符だ。落ちたんだ。
エマニエル夫人 無修正版 [DVD](シルヴィア・クリステル)
おちはきれいにつくが、なんというか、ポランスキーは異常だ。
・チェン・カイコーのチュウシン村
おれは、チャン・イーモウより好きだが壁の人気投票では0票。子供たちが映画を見る。電気が切れる。自転車をこぐ(ここの漕いでいるシーンが美しい)。チャップリン(警官の首をステッキで捕まえる)。映写技師が戻る。子供たちは散る。一人残っている子。目が見えない。映画館に白いステッキを突いて出てくる青年。誰?
おれは好きだな。特に自転車を漕ぎまくっているときの表情。生き生きと、という言葉の意味そのもの。
・クローネンバーグの最後のユダヤ人
金持ちがガレージに偽装していた最後の映画館が通報により見つかる。そこでは最後のたったユダヤ人に扮するクローネンバーグ自身が拳銃自殺をしようとこめかみに銃をあてたり、目に押しつけてぐりぐりしたり(生理的に不快)、口に押し込んだり。まだ時間はかかりそうだが、映画館とユダヤ人が消え去り世の中はハッピーになるだろうというナレーション(男と女の会話がずーっとかぶさる)
何考えてるんだ?
・アモス・ギダイのハイファの悪霊
ワルシャワ1936年。映画を観る人々。70年後、ハイファ。映画を観ていると軍人が来る。空襲です。爆弾落ちる。死んだ女を映す。
すばらしい映画。しかも高度に政治的。しかも2重構造を2重にしている。これは傑作。映画はノスフェラトゥかゴーレムかな? 表現主義の映画を観ている。
・キアロスタミのロミオはどこ
ロメオとジュリエット。女たち。男たち。女たち、涙が流れる。涙が流れる。涙が流れる。
演出と過剰なリアリティ。ばかばかしいほど涙が流れる。これも途中でキアロスタミだとわかる。
・オリヴェイラの唯一の出会い
フルシチョフと部下の会話。同志法王(パパ・カマラール)。スターリンが踊れと言えばみんな踊った。法王が祈れと言えばみんな祈る。つまり法王は同志である。法王、フルシチョフに十字を切る。フルシチョフ右手を挙げる。
おもしろすぎる。
・エリア・スレイマンの「臆病」
映画館から修道士なのかがたくさん飛び出してくる。いきなり笑ってしまう。目玉ギョロギョロが出てきて、トイレに入る。ズボン濡れる。男2人くる。困る。扉閉めてひっこむ。でてくる。舞台に上がる。客席、視線の移動。銀色の車を移動してください。車を移動しているギョロ目玉。マイクロバスに修道士たち。
なんじゃこれ? こんな作家がいたとは。おもしろいおもしろいおもしろい。
・ヴィム・ヴェンダースの平和の中の戦争
コンゴ。植民地支配、独裁、内戦が終わって、映画館で子供たちが映画を観ている。表情を映す。
ブラックホーク・ダウン スペシャル・エクステンデッド・カット(完全版) [DVD](ジョッシュ・ハートネット)
すばらしい作品。感動した。ヴェンダースってもうだめなのかと思っていたが、まじめに映画を撮ると素晴らしい映画になるし、映画にはセリフも物語も何も必要なくて、ちゃんと映像があれば良いということがわかる。子供たちが飢えを覚えず、映画で笑ったり、自分のことではなく映画を観て悲しみを覚えたりできるといいなぁと。
・ウォルター・サレスのカンヌから5575マイル
ブラジル、小さな映画館。たこなぐりの看板。こりゃどんなお色気映画だい?と右側のあんちゃん。こりゃカンヌで賞をとった大人はわかってくれないだ、おめぇは教養がねぇからいけねぇ、と左側のにこやかなあんちゃん。カンヌってなんだ? フランスの小さな漁港だ。そこで音楽が始まる。ラップのようなボサノバのような。誰がカンヌをやってんだ? それはジルだよ、ジル・ジャコブ。ってことは、あれかい、ジル・ジルベルト。いやいやそいつはジル違い、カンヌのジルはジル・ジャコブ、あそれ。いや、本当はカンヌに行ったこたないけどな。
大人は判ってくれない [DVD](ジャン・ピエール・レオー)
すげーーーーーおもしろい。最高の映画。本当の映画。映画の中の映画。すべての映画のお手本のような映画。構図も、リズムも、役者も音楽もセリフもすべて最高。これ、観れただけで観に行ったかいがあった。初めて見た作家だけど。
・ケネス・ローチのハッピーエンド
おやじと息子。映画館の受付の行列。ぼうず、何見る? これはどうだ。いやだ。こっちはどうだ。いやだ。後ろから声がかかる。さっさと決めろ。息子に決めさせたい。まだ、並んでいるんだからいいじゃない、と前のほうに並んでいるおばさん、これはどうだ、いやだ。受付まで来る。まだ決まらない。売り子もせかす。子供、今なんどきだ? サッカーを観よう。そうしよう。映画館を出て行き、こ踊りしながらサッカー場へ向かう。
普通におもしろいが、なんでこれ最後にするんだ? と製作者側も感じたのか、エピローグにルノワール。
というわけで、なんといってもウォルター・サレス。タライをたたきながらのブラジルラップ。
追記:
なんだ。これ売ってるのか。
それぞれのシネマ ~カンヌ国際映画祭60回記念製作映画~ [DVD](テオ・アンゲロプロス)
しかし、サレスとヴェンダースのためだけに買うかというとちょっと考えるなぁ。スクリーンで観てくらんだし。というか、これ買うならトップ・ハットを買う。
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