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日々の破片

著作一覧

2019-09-01

_ 劉慈欣の三体読了

折りたたみ北京があまりにもおもしろかったので、買っておいた三体も読み始める。延々と読み続けて結局半日で完読してしまった。本当におもしろい、すごい作家だ。

文化大革命から始まるというのはなんとなく知っていたが、最初は内ゲバの様子から始まって(それなりに本筋に関係ある人物が出て来ていたことは後でわかるのだが、本筋そのものには関係ない)あれ? と思う間もなく主役のうちの一人の父親が鋼鉄の三角帽子を被せられてジェット機(跪かせて両腕を後ろから捩じ上げる)で吊し上げられたうえに殴殺されて、先に自己批判して文革側についた母親が発狂するとか、とてつもなくハードな描写で始まって驚いた。

もちろん、文化大革命がハードだというのは知っているが(たとえば『龍のかぎ爪 康生』)、ここまで書くかな? と思ったが、そもそも対象読者が既に文革を知らないこと、戦争を知らない子供たち状態なのだなと思い当たった。

結局のところ、人民解放軍の性質上、どの派閥であっても武器を容易に入手でき、武器を手にすれば革命の火花を散らせる道理だ。火花が燎原になるかは時勢と政治的な求心力による。あれよあれよという間に劉少奇が殺され、鄧小平は追放(この人事的なオルタナティブの確保と周恩来に対する信任(ただし娘は拷問死させているのでなんとも微妙だが、いずれにしても周恩来の器のでかさはただごとではない、というか国共合作も半分は周恩来だし)は、晩年の毛沢東の唯一の見識と言えなくもない)、毛沢東が病死してNo.2だと思っていた林彪はことをあせって脱落、四人組が最高権力を握ったのも束の間、盤石に見えた文革が人民解放軍の特殊部隊によって鎮圧されて(クーデタといえなくもない)終結という後からさまざまな資料で読まないと何がなんだか隣国のことなのにさっぱりわからないという状態で、まして本国の人たちもなんだか群盲象を撫でるのようなものなのだろう。

主人公の一人が謝罪させようと呼びつけた文革少女(その後は下放少年)の成れの果ての生活状態が就職氷河期世代に似ていなくもなくて本当にそうなのかなぁとかわからないことも多い(チェンカイコーとかまさに紅い小冊子を振り回しながら下放したりしてもチェンカイコーなわけだが、たまたま運が良かったということか?)。

私の紅衛兵時代-ある映画監督の青春 (講談社現代新書)(陳 凱歌)

さてそれから時代は流れSTEM教育でずんずん先進国になった中国の現在が舞台だ。

科学者が次々と謎の死を遂げる。

ナノテクノロジーの最先端を突っ走る主人公に軍から呼出しがかかる。呼出しに来た4人組は警官が2人と軍人が2人、そのうち1人の警官が絵に書いたような新宿鮫というか無頼派で、当然、科学者的には気に食わない。が、この警官の俗っぽさというか絵に書いたような無頼派っぷりが物語を和ませなくもない仕組みになっている。

という全世界の政府機関を巻き込んだ(呼ばれた先にはNATOや米軍の将校からCIAのエージェントまでいて、対立よりも協力という挙万国一致体制がひかれていて主人公は仰天する)敵(となれば、外宇宙からの侵略者ということに自然となるよな)との闘いの物語と、外宇宙からの侵略者の到来を待ちわびる人たち(ですら、3派に分かれて殺し合いをしている内ゲバ、待てよ、文革の内ゲバを冒頭においているのはそのあたりのニュアンスを入れたかったからなのかも)が宣伝用に作ったVRゲームのプレイ観戦が交互に進む。

折りたたみ北京に収められていた始皇帝の軍隊で構成したコンピュータが、ニュートンとノイマンに結び付くとは思わなかったが、こちらはさらに1桁兵隊が多かったのでスケールは桁違いだ。

それにしてもおもしろい。続きが楽しみ。

三体(劉 慈欣)


2019-09-03

_ 虫や鳥が見ている世界―紫外線写真が明かす生存戦略 読了

夕飯を食べながらだいたい2ページずつ読んでいた『虫や鳥が見ている世界―紫外線写真が明かす生存戦略』をようやく読了。

書店で帯にカラスは黒くなかった? とか書いてあって、カラー写真で紫外線が見えないから単に黒に見えているだけで実は個体差のある模様があるとか書いてある。で、それを示すために紫外線写真というのが添えられている。

えらくおもしろいので買って読んだのだった。

普通のカメラから紫外線フィルターを外したりいろいろして、紫外線を撮影できるようにしたカメラ片手に筆者(生物学者らしい)はボルネオの崖を3メートル滑り落ちたりしながらさまざまな生き物の紫外線写真を撮りまくって、解説を加えていく。えらくおもしろい。

学問はどう役に立つかが相当問われるから(少なくとも時間と労力)わかっていないことが多過ぎて、そういうものは良くわからないとしていて好感が持てるが、おおざっぱには鳥や昆虫の一部は紫外線が可視光に含まれるので、人間には感知できない色鮮やかに敵から身を守ったり、求愛したり、威嚇したり、餌を探したり、いろいろしている(確定しているものもあれば、多分そうだろうまでいろいろ)。

特におもしろかったのは、メラニン色素がそうだが、色というのは色素によって太陽光から吸収しないものを反射しているのだと思ったら、それだけではなく、特に昆虫や鳥の羽毛は、構成している物質の組み合わせで反射させて色を出していて、それを構造色というのだということで、色素の問題は退色することだが、構造色は構造が維持されている限りは退色しない、だから玉虫厨子は今でも玉虫色に光っていると書いてあって、おおなるほどそうだったのかと目からうろこが落ちた。落ちても紫外光は見えないけど。

カラー版 虫や鳥が見ている世界―紫外線写真が明かす生存戦略 (中公新書)(浅間 茂)


2019-09-14

_ おれが知らない明治の軍人

なんとなくデイヴィッド ピース の『Xと云う患者 龍之介幻想』を読んでいるのだが、重畳たる繰り返し表現と明治文学擬古調翻訳に半ば呆れ半ば楽しみながらふと全然知らないものに出会ってこれはなんだ? となった。

中国に渡って現地入りしているアメリカ人らしき友人と会話しているところで、片手に中国人の赤ん坊を抱き片手で指揮をとる樋口大尉というのが出てくるのだが、まったく知らん。

Xと云う患者 龍之介幻想(Peace,David)

普通に暮らして普通に読書をしたり映画やテレビを観たりしているので、白瀬中尉の杉野は何処や、死んでも喇叭を放しませんの木口小平は知っているのだが、樋口大尉って一体誰だ?

そこで調べてみると、日清戦争での行軍中に敵の捨て子を見つけた樋口大尉が、その子を抱き上げると泣き止み、他の者に預けると泣き出すので、やむを得ず抱っこしたまま指揮をとったという感動秘話が出て来た。

これもいろいろおかしくて、敵といっても明らかに赤ん坊を連れていたということは親は避難民なわけだから当時の戦争が民間人おかまいなしに蹂躙していくものだということは明らかで全く誉められたものではない。が、当時は百人斬りほどの出まかせな宣伝をする必要があったとも思えないから捨て子は放っておけないと拾い上げたのは事実かも知れないが、ではその捨て子はいったいどうなったのか? というとまったくわからないのででっちあげ美談の可能性も相当高そうだ。

で、ふと、広瀬中尉も木口小平も日露戦争だから、なんとなく日露戦争は画になるから今といっても1970年代頃まではそのての話が伝わっていたが、樋口大尉は日清戦争だからそのての話は忘却の彼方なのかなと考えた。だが、今調べたら木口小平も日清戦争で、征露丸のイメージで日露戦争時のエピソードだろうと勝手にこちらが勘違いしていただけだったのであった。

それにしても、日露戦争は日本海大戦の明治天皇のやつとか203高地(海は死にますかではなく、もっと古いやつ)のやつとか、第一次世界大戦ですら青島攻略の最初期の飛行機乗りのやつとかで物語的に知っているのに、日清戦争ってのは知らないものだ。映画的なおもしろさを持つエピソードがほとんどなかったからなのだろうか(樋口大尉のイメージ通り一方的な進軍で降伏させたのかも。とはいえ木口小平は死んでいるわけだが)。

青島要塞爆撃命令 [東宝DVD名作セレクション](加山雄三)

青島攻略のこの映画はとてつもなくおもしろくて忘れようとしても忘れられない。というか監督は円谷英二だったのか。

そもそも最新鋭の爆撃機に乗り込むわけだが、どれだけ速度を出しても横を飛ぶツバメに追い抜かれて口惜しがったりする程度で、ツバメは200km/h出すそうだから、そりゃそうだ。

何しろクライマックスでは、そいつに乗り込んで、トンネル状の基地に武器を搬入しようと疾走するドイツ軍の輸送列車を追って、最後の爆弾で無事爆破するというものだから、せいぜい汽車と同程度の速度しか出ない算段だ。しかも、爆弾の投下方法が縄で縛った弾頭の縄を出刃包丁でぶった切るという原始的な手段なので全然命中しない。

と、とてつもなくオフビート(汽車との追っかけっこではそれなりにはらはらさせる)でありながら最後はしっかりと勝利するから、暢気な調子で勝ち戦を楽しめる、1960年代の敗戦、占領からの独立15年くらいの日本人には良い感じだったのだろう。


2019-09-15

_ ロイヤルのファウスト

上野にロイヤルのファウストを観に行く。

マクヴィカーの演出は一種の円環構造を描いているように見えた。

最初、下手から謎の人物が出て来て人々を連れて上手へ消える。その後は出てこないのでなんだったのだろう? と思う。

ファウスト(グリゴーロ。すごく良い)は赤い部屋着をまとって世を呪う。悪魔と契約をしても良いと歌ったところで、「来ましたよ」とそっけない字幕とともにメフィストフェレス(ダルカンジェロ。この人も抜群)登場。あまりの気安さが楽しい。

最後は、十字架からイエスが降りてくる(2幕で剥がれ落ちるのと何かの対称かも知れない)が、このイエスは多分、冒頭の謎の人物ではないだろうか? するとメフィストフェレスの部下もそちらに集まって行く。メフィストフェレスはしょうがないなぁと下手に一人立ち去る。ファウストは赤い服で崩れ落ちたままで動かない。

冒頭とつなげれば、ファウスト末期の夢とも読めるし、お話通りにマルグリート(ソレンセン。この人も素晴らしい)によって一緒に救済されたとも読めるし、取り残されたともとれる。おそらく末期の夢なのだろうが、実にきれいな終わらせ方だった。

とにもかくにも歌手がいずれも素晴らしく、パッパーノはパッパーノだしロイヤルとオルガン奏者は立派だし、予想していたよりはるかに良い舞台で実に良いものを観れた。それにしても演出は覚えているのに、音楽はほぼ忘れてしまうのは不思議だ(でも、どこかにしまわれていて流れると思い出すのだろう)。そこがグノーはグノーだということなのだろう。

それにしても、あまり聞かないようでいて、ここぞとばかりに歌われる歌をどれも知っている(しかしメロディは後になると思い出せない。どこかにしまわれて、流れると取り出される仕組みのタイプの曲)のは不思議だった。

特にジベールが3幕の冒頭でマルグリートの部屋へ続く階段に残すところの歌の不可思議な上昇して落ちる音型にすごく記憶があるのだが、この曲だったかどうかが怪しい。

Diva Divo(Didonato, Joyce)

(子供はディドナートで聞いてるからだろうと言うし、確かにこれは手元にあるが、ちょっと違う気がする)

3幕では、2階の窓辺でファウストのことを歌うマルグリートと路上のファウストをつなげるためにメフィストフェレスが階段を持ってくる演出がおもしろい。他の演出ではどのようにしているものかちょっと知りたい。


2019-09-16

_ 挑戦する経営読了

@shase428 が読みながらツイートしているのがおもしろそうだったので、千本倖生の挑戦する経営をマーケットプレイスで買って読んだ。

第二電電を立ち上げるにあたって、京セラとかウシオとかだけから出資してもらうと後から旧勢力からの突き上げを食らう可能性があるから、三菱商事に出資してもらったのいうのが、それだ。

で、通信の歴史書かと思ってアマゾンで調べたら、起業家本人の経営書(のような題名)の本で(実際、ベンチャー起業家およびその予備軍に対する実録ケーススタディ本という気持ちで書いているように読める)、ちょっと興味持てないかもと思いながらも買ってみたら、想像を遥かに超えておもしろく、それなりには感動的ですらあった。

まあ、どう考えても、電電公社に修士卒で入った技術官僚候補が、日本の健全な通信技術の発展には電電公社を民営化するだけでは不足だからコンペティタを用意すべきで、そんなことができるのはおれさま(と金を持った経営のプロ、で、口説き落としたのか向こうが下心まんまんでどう口説かれるか賭に出たのかはわからんが稲盛)だけだとずんずん突き進むは、許可を求めるな謝罪せよとばかりにフルブライト奨学金の受給資格を先に取ってから留学ると言い出す人だから、軋轢はすごく多そうなのだが、文章の上では出てくる人がみな良い人ばかりなのはまるで淀川長治みたいだ。このくらいポジティブに書ける人というのはやはり只者ではないのだろうな。ただ大学時代に知り合った神父の話はそれほど掛値がなさそうだ。

2008年の本なのでイーモバイルを起業して、エリクソンをメインに当時やっと出てきたばかりのファーウェイを押さえ(ここでなぜファーウェイなのか、それはルータから始まった会社ということはIPネイティブで、電信ネイティブではない点だと書いているが、慧眼なのだろう)にアンテナ網を作るところで終わっている。それにしてもイー・アクセス最初の強敵孫正義のグループに入ることになることはこの時点では考えてもいなかったかも知れない。

読後爽快だから、すごい人なのは間違いない。

挑戦する経営―千本倖生の起業哲学(千本 倖生)


2019-09-23

_ 入門Node.jsプログラミング

翔泳社の野村さんから「入門Node.jsプログラミング」を頂いたので軽く読んだ(仕事でNode.js使うつもりはないので、それほど真剣に読まない)。

以前、入門Haskellプログラミングももらったのだが、それと同じ妙にかわいいロボットの表紙のシリーズだ。

入門Haskellプログラミング(Will Kurt)

もっともHaskellのロボットが手にしているのは総和や総乗記号が書いてある立方体だけど、Node.jsのほうはヒマワリになっている。JSってヒマワリなのか?

中身はどちらも、少なくともプログラムとは何かを知っていて、コンピュータに環境を準備できる程度のリテラシーがある人を対象とした入門書だが、プログラミング言語を構成する概念を解説していく入門Haskellと異なり、入門Node.jsは(と書いて、そりゃJavaScriptの入門じゃないのだから当たり前だった)料理学校の依頼によって、コース選択、レシピページ、受講サインアップページ、Ajaxを使ったUI改善のためのAPI、チャットを備えたWebアプリケーションを徐々に開発して、Herokuにデプロイするまでの一連の作業のチュートリアルになっている。

なぜチャットなんだ? とも思うが、socket.ioを使った双方向通信のサンプルを示したかったからのようだ(能書きのところで昔懐かしいコメットのジグザグが示されていたりするのが楽しい)。

APIをAjaxから使う場合は、ブラウザーUIと同じクッキーが使えるからAPI認証はあまり考える必要はないと思うのだが、一応、別建てのトークンを使った方法が示されていたりする。

ES6に対する目配りとしてはAppendixにlet、const、埋め込み文字列、アロー関数をまとめて示しているくらいだが、確かにこの4つが重要ではある。

ルーティングにはexpress.jsを途中から導入したり、結構、作らないで使え精神は教えるようになっていたり、最初はやたらシンプルな作りなのが、1/3あたりでWeb MVCモデルを使った設計に変更していったり、ぱっと考えて必要そうな内容を含んでいる。DBはMongoDB。

Herokuのデプロイまでが含まれていることもあって、Webアプリケーションの作り方を自習するには良い本だと思う。

入門Node.jsプログラミング(Jonathan Wexler)


2019-09-29

_ 楽園の泉読了

三体がおもしろかったので、本格SFを読んでみるかと思っていたら、岸本さんがクラークといえば楽園の泉というようなことを呟いていたので

Kindle版の権利を買って読んだ。

アマゾンサイトの説明も何も読まずに白紙状態で読み始めたもので、最初いきなり古代インド(だと思って読んでいたらどうもスリランカらしいが)の王様が作り上げた空中庭園の話が始まって、はてこれはなんだと思いながら読み進める。

と、いきなり26世紀くらいに話が飛んで、インドのあたりの引退した政治家の話になり、科学系のTVキャスター、古代文化研究者、小男(という観察が散々出て来くるのだが、意味があることが最後になってわかった)の建築家が訪問してくる。さっぱりどういう話かわからないままに読み進めると小男があたかも『S・カルマ氏』(だと思って書いてみたが、ちょっとあやしいので調べなおすとS・カルマ氏ではないみたいだが、山手線のホームからホームへ歩いて行って戻って来る男)のような行動を取る。

というところから、宇宙エレベーターにかける小男の野望の物語が始まるのだった。宇宙エレベーターで野望といえば、セルカンだが、なるほど、本書を読んでどうしたとかja.wikipediaにも記載されているなぁ。

短い断片から構成される不思議な小説で、資金調達の話あり(ここで出てくるアラブや火星の首長たちが良い味を出している)、古代の王様の話があったりするが、ほとんどの場合、エピソードの積み重ねなので、それでどうなったや、なぜそうなったかについては、何も書かれていないのがおもしろい。なぜ、王様は見るのが大変なところに侍女たちの画を描かせたのか? (階段があるから実は見えるというどうでも良いことが書いてあるが、坊さんたちが目の前を向くと邪教の象徴としていやでも目に入って不快になるだろうから、とかなのかなとかそこは残されていない記録なので、語ることはできないというこの作者の作法なのだろう)

最初の建設中の事故のくだりでは、敵対する天才天文学者にして高僧のアシスタントのテロリズムのようであり(が、その後の活躍に触れた箇所もあるので、少なくとも実行犯として捕まったわけではなさそうなので違うのかなぁ)、その事故が経緯で金色の蝶々が飛び立って土地問題が解決したりするのだが、そこで坊さんたちが舞台から退場すると、建設の苦労話に突入していく(こうやって作中の事実だけを書くと、さっぱり意味がわからないくらいに、てんでんばらばらな事象が組み合わさって構成されている)。

最後、小男は事故で隔絶された太陽研究者の一群の救出に向かってエレベータを昇って行く。(ここからは普通に時系列通りに進行するドラマとなる)

しかし2度目の挑戦であったが、小男の名前は残らないという終わりを迎えるが(冒頭で、引退した政治家は、小男の行動原理は自分の名を残すことにあるのだろうと観察している)、それは些末なことなのだった。

なんか読後、非常な爽快感というか達成感のようなものを感じる良い作品だった。何かを作るために真剣に立ち向かう人の話はいずれにしても感動的なものなのだ。

楽園の泉(アーサー C クラーク)

ここでは単位はミクロンだが、30年が経過してナノテクノロジーとなり、同じようにアルファケンタウリのほうから電波を受信し、宇宙人がなぜナノテクノロジーに脅威を感じるかとか考えると、なるほど、三体の仕掛けの幾つかはここにあるのだな、と思わなくもなかった。(が、興味の向きが全く異なるのでそれはそれこれはこれだ)


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