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ThoughtWorksアンソロジーの翻訳本をyyamanoさんから献本していただきました。ありがとうございます。
ThoughtWorksアンソロジー ―アジャイルとオブジェクト指向によるソフトウェアイノベーション(ThoughtWorks Inc.)
さて、この本は、おもしろくてたまらないところもあれば、まったく興味を持てないところもある、まさしくThroghtWorksという会社のアンソロジーです。個人的には、Aslak(PicoContainerのファウンダーの一人)の書いたものが入っていないのが残念(たぶん、かれらはプログラミングに忙しくて文章は書かないのかも知れない)。
というわけで最初に苦言を呈すると、ThoughtWorksのような会社だと個人名で記憶されている人もいるわけで、目次でどの章を誰が書いたかわかると良いと思う。もっとも、この本は個人技ではなく、あくまでもThoughtWorksという企業「の」アンソロジーだということを強調したくて、こういう構成になっているのかも知れないから、それはそれで理解できる。
あと、ひさびさに、訳注の妙味(岩谷メソッド)に触れられて楽しい。おれは、訳者が自己主張するのが好きなのだ。中には、「ここは原書の間違いで……」みたいなものもある。確認したのなら本文を直しておけよとも思うが、本文は原書(ドメイン)に忠実(にモデル化)、その代わりに訳注(アノテーション)で読者(つまりインフラストラクチャコード)にメタデータを与えるというアプリケーション(書籍)なのだろう。というわけで、9章の『ドメインアノテーション』ですよ。
アノテーション(.NETだと属性)がおもしろいのは、インスタンスではなくクラスに付けられる点なのだが、最初、僕はXMLの属性との関係でインスタンスに付けられないことで結構、混乱したのを思い出す。XMLでは属性はインスタンス(というか個々の要素)ごとに異なる値を持てるから、Rubyのオブジェクトの属性、.NETやCOM、JavaBeansのプロパティに相当するわけだが(要素名に紐づくのではなく、要素に紐づく)、多くのスキーマではプロパティは内部の要素に割り当てる。すると属性の役割が曖昧になってしまうわけだが(そこで、属性値にはenum(閉じた選択枝)を割り当てるのが良いのではないかと気づく)、全然、ThoughtWorksアンソロジーとは関係ないので、元に戻すと、『ドメインアノテーション』は良いプラクティスだと思った。
っていうか、イメージ通りのThoughtWorksだなぁというのは『Antビルドファイルのリファクタリング』で、タイトルをみた瞬間に不吉な匂いがぷんぷんしてくるわけだ。でも読み進めると
リファクタリングは通常、コードに対して機能的な影響を与えていないと保証するために、単体テストを必要とします。
と最初に書いてから、ではなぜAnt(というかbuild.xml)のリファクタリングが可能なのかについて説明している。まあ、結局のところ、ビルドファイルなんて単純なんだからそんなものいらないだろうと流して、細かくチェックしていくしかないけど、それも難しいよね、でも書き直しをしていかないともっと悪いわけじゃん、みたいに流されてしまう。とはいえ、最初にリファクタリングの必要条件について書いているのが重要だと思う。というか、だったら『ビルドファイルのライフハック——整理整頓重要』とかにすればいいじゃん、リファクタリングって言いたかっただけだろ、という気もしないではない。いや、内容はためになります。
巻頭の『ビジネスソフトウェアの「ラストマイル」を解決する』はおもしろい。バージョンのないソフトウェアというのは、生物だな。これは冒頭にふさわしい考えの種になる文章。
それに対して、『プロジェクトバイタルサイン』はおれにはまったくおもしろくなかった。それだけに逆も真で、これがおもしろいというか、考えの種になる人も多そうに思う。
というわけで、創業者兼会長+テクノロジプリンシパル(おれ、バレエ団以外でプリンシパルという言葉を使っているのを初めて見た気がするが、良く使われる職掌名なのだろうか)が書いたもの、イテレーションマネージャが書いたもの、QAコンサルタントが書いたもの(『アジャイルかウォーターフォールか——エンタープライズWebアプリケーションのテスト』、これは必読(知っておくべきこと)では。というのは用語とテストのステージについての良いまとめになっているからだ)、チーフサイエンティストが書いたもの(コードのメタモルフォーゼでおもしろさは一番だな)、その他いろいろ、読み考え実践に取り入れてみる、試してみる、逆を張ってみるなど、立場いろいろの考え方の違いを眺めるなど、使い方いろいろでおもしろい。なんでいろいろとか書き始めたのかと疑問に思ったら、表紙に影響されたようだな。
ジェズイットを見習え |
> 目次でどの章を誰が書いたかわかると良いと思う。<br><br>指摘ありがとうございます:-)<br>増刷が決まったので、二刷以降では目次に執筆者名と肩書きをいれるように変更しました(ただし帯なし)。
おめでとうございます。<br>それはいいですね。この場合、特に肩書ですね。