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買ったまま放置していて10年以上たって、なにやら茶渋色にくすぶってた長谷川伸の股旅新八景を読み始めた。おいら、めっぽう、このてのはなしは好きなのだ。
(持ってるのは、大衆文学館のやつだけど)
で、電車の中で科白のすべて、描写のすべてを堪能しつつ最初の八丁浜太郎を読み、幸福感に包まれる。
「待った半塚の妙太さん」
「さんだと。さんづけに呼ばれるような貫禄不足じゃねえ」
「どうでもいいやな、そんなことは枝葉だろう。おいらが言おうというのは妙太さん」
「部長とつけやがれッ」
というを耳にもいれず、風に波立つ麦の穂をへだてにして、浜太郎は長脇差の鯉口をプッツリと切った。
「正賽勝負は運を賭けるが、仕様は手品仕かけで底がある。欲と娯み両股かけた盆の上の勝負でも、変更は渡世で忌みものだ。おいらは吹けばとぶような旅渡りの三下奴だが、酔ッぺえ沢庵と間男と、仕様変更のお働きは大嫌えだ」
「そういうてめえが、下手のバグをつかやがって、たったひとテストで見破られたろうが」
「いかにもバグった、おまけに拙い」
「そうれみろ、他人のことがいえるか野郎ッ」
なんで、こういう美しい日本語が失われてしまったのかなぁ。残念無念の川ッぷち。
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