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オーマンディ・シリーズでショスタコーヴィッチの死者の歌を聴く。
ショスタコーヴィチ:交響曲第14番「死者の歌」 / ブリテン:「ピーター・グライムズ」〜4つの海の間奏曲、パッサカリア(オーマンディ(ユージン))
ブービー交響曲(なんていう言葉はないが、最後から2つ目。もっともアダージオは素晴らしいけどそれは別の話)に、変則的な歌曲を持ち込み、それが女声と男声、死を身も蓋もなく全面に出してしまった詩(生も暗く死も暗いとか、詩人は死んだとか)、最後の交響曲作家(の一人)と、どう考えてもマーラーを意識したとしか思えない作品。ただしテノールではなくバス、アルトではなくソプラノにしているところが違うね。この逆転は、特に男声で効いている。アポリネールのラサンテ監獄にてや、キュヘルベケルのおおデルヴィーク。
オーマンディは、ベストといえばレスピーギ、ストコフスキーほどではないけれど、大衆迎合な無能だけど堅実が取り柄の指揮者という評価(だったよ、少なくとも、僕がクラシックを聴き始めたころは)。でも、その一方で、こういう作品のアメリカ初演をしているということは、単なるお人よしの太っちょではない。まあ、斬新無比な解釈とかがあるわけではないが、安定した技術の上できちんとした音を作っているのだから、悪いわけではない。第一楽章の弱音は美しい。
ただ、この作品を単なる死にそうな病気になったショスタコーヴィッチの諦念がどうのというように捉えるのは、たぶん、異なる。
というのは、それが嘘か本当か、まるでアンネの日記のようなものだが、すでに証言があるからだ(読んでないけど)。
ショスタコーヴィチの証言 (中公文庫)(ソロモン ヴォルコフ)
証言がどういうものかは読まなくともわかる(というのは、証言にインスパイアされた柴田南雄の革命(第5交響曲)解題は熟読したからだ)。
それで考えれば、死者の歌はこう読める。
ロルカの詩は、ロシア革命と読もう。深いところから、革命家たちは死を恐れることなく、マラゲーニャで革命は成就する。
しかしローレライの誘惑が待っている。革命は自殺する。心して(ほら、ジダーノフとその同伴者が)。マダム、御覧なさい(とこちらを見る)、これがロシアだ。
同じアポリネールで、ラ・サンテ監獄にてが続く。解放されたはずが逆に檻の中。
同じアポリネールで、しかしバラバより100倍は悪いスルタンより100倍悪い皇帝(それはスターリン)にコサックたちは悪口を尽くす。
そして、デルヴィークで、圧制者の鞭にも関わらず、芸術は不滅だ、と続く。
で、詩人は沈黙のうちに死んだのか? いや、違う。すべてのものに死があり、死によりすべてが明らかになる。
大変な時代、大変な政治状況下で活動を続けた作家の反抗精神のたまものだろう。しかも、すばらしい作品だ。
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