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日々の破片

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2010-07-27

_ コントロールを観た

レンタル版(先頭にスキップできない長い広告が入るのだな、と初めて知った)のコントロールを妻に借りて来てもらって観た。

これはきつい映画だな。

コントロール デラックス版 [DVD](サム・ライリー)

まず物語は完全に破綻しきっている。というか、物語になりようがない。

こういう物語だ。

道路歩いてて近所の子供がボール取ってよーとかを無視して、家に帰ると部屋にこもってボウイのアラジン・セインを聴きまくっている。壁にはルーリードのトランスフォーマのポスターとか。マリファナ吸ってぼーっとしている。

でも高校には通っているが、やっぱりぼーっとしている。友達の家に行ってもぼーっとしているが、窓から外を眺めながらワーズワースを暗誦してみたり。お、詩人。

友達が誘って来た女の子が可愛いのでボウイのライブに誘う(スパイダーツアーらしい)で、そのまま卒業して結婚。でもやっぱりぼーっとしている。

地元クラブに行くとどうでも良いバンドが何かやっている。知り合い3人組がボーカルがいればおれたちのほうが上なのになぁとかつぶやいている。ところが、どうでも良いバンドではなくて、セックスピストルズだった。おい、ボーカルさがしているとか言ったよな? と、すべての気の迷いが始まる。

演奏していればメジャーにもなりたくなる。奥さんから400ポンド借りて(というか他の連中は一文も出していないようだ)ワルシャワの最初のドーナッツ盤を出す。トニーウィルソンがテレビで紹介してくれる。

クラブでトニーウィルソンにおれらもテレビに出せと談判して、歌い始める。えーとなんだっけな。トランスミッションはこの後、テレビでやるから、シャドウプレイあたりだったような。

すげー、お前ら天才! と興奮したDJが楽屋にやって来て押しかけマネージャになる。

すげー、お前ら天才! と興奮してトニーがファクトリーへ契約しろとやってくる。もちろんメジャー指向なんだけど、トニーの意気込みに負けて契約してしまう。トニーは左の指を切って血で契約書にサインする。sが1つ足りないから書き直せ!で、ついに倒れてしまったり。

が、金はない。

昼の仕事は職業紹介所で、くずばかりを相手にしている。「どんなことがお好きですか?」「テレビ見ること」「他には?」「朝食と昼食と夕食」……「映画のホットドッグスタンドの職がありますよ」「ホットドッグは嫌いだ」「そういわずに、電話してみましょう」

てんかんの女性が職が決まったと同時に発作を起こして倒れる。

ロンドンへツアー。

客がいないと不満を垂れているうちに、寒気がするとかでギタリストと喧嘩になり、泡を吹いて倒れる。自分もてんかんだった。

薬がたくさん。副反応もたくさん。どの薬がきくかわからんから、全種類飲めと言われる。

金は入らない。

ベルギー人の女性がインタビューに来てねんごろになる。

薬の副反応だと思うが、就業中に居眠りしてしまって、ほとんどクビになる(日本と同じで自分から辞表を提出するように仕向けるようだ)。

妻のことは愛していると思うし、学校出てすぐに結婚して楽しい生活が過ごせたし、子供もいる。感謝もしているし(時給1ポンドのバイトをしてもらうことになった)、でも彼女はパンクロッカーではない。故郷の町を大切に思っている。おれはそんなの嫌だと思っている。ベルギーの女性はいわゆる自立した女性でうらやましい。

ヨーロッパツアー。

アンノウンプレジャーツアー。

奥さん、雑誌のサインからベルギー女性の存在を察知して問い詰める。返事ができない(高田純二のような人間もいるけど、そうではない人間もいるのだ)。ごめんなさい。

客も増える。怖くて歌えない。

それでもベルギーの女性とは手が切れない。別れを告げたはずだけど、自由人だから全然気にしていないのだ。やばい、本気で惚れそう。

ついに奥さん離婚を申し立てる。受けてしまう。ごめんなさい感でいっぱい。

金がなくて泊まるところもなく、仲間の家を転々とする。

アメリカツアーが決まる。月曜に出発だ。

最後にやり直したくなる。家に戻ってみる。誰もいない。奥さんを待っている間にいろいろ考える。

奥さん帰ってくる。面倒になる。そこで突然、出てけと怒鳴って追い出す。

さらに時間が過ぎる。月曜になる。洗面所の戸棚の釣り縄を見上げる。

奥さん帰ってくる。悲鳴。

おしまい。煙突から煙がもくもく。

……というか、遥か遠くの日本ですら、アンノウンプレジャーはある程度売れた(だっておれ、青山のパイドパイパーハウスで買ったし、たぶん、ほぼリアルタイムに)のに、なんでそんなに金がないんだ? とか、マリファナは最初だけで、あとは基本的にふつうのタバコをマネージャ含め、みんなスパスパ吸いまくっていて、おお80年代ですな、とか、ベースが意外と体育会系(楽器重いし)とか、ギタリストがやっぱり変とか、いろいろ思うところはあるが、この映画は、イアンカーティス(それにしても似ているなぁ。ライブでの手足のばたばた振るところ――映画だとその後、てんかんの発作でひっくり返るけど)の声と詩(正しそうな和訳があるのが良いところ。考えたら、おれは歌詞がわからなくて、イタリアの海賊版歌詞集+17インチドーナツ盤つきのわけのわからないブートレッグを新宿CISCOで買ったのを思い出した。こないだ、本棚で見かけた)に思いいれがないと、あるいは一部の彼の思考方法に共感できる人でないと、まったくおもしろくない風景映画に過ぎないだろうなあと、思う。

で、おれは、目と耳をそらすことができなかったのだが、それはしょうがない。やはり、すげー天才と感じてしまうのであった。

追記:思い出したが、やたらとハワードデヴォート時代のバズコックスに対する思い入れが(脚本家に、かもしれないけど)ある。妻の友人たちとの会話。「バンドやってるんだ」「バズコックスは好き?」、ベルギー女との会話。「バズコックスは好き?」、その他、そこら中でバズコックス。そういうもんなのかな(マガジンになってからは良く聴いたけど、ハワードデヴォートがいたころのバズコックスは聴いたことないからわからない。でも、ハワードデヴォートは確かにすごいやつだが、声の音の高さがちょうど逆だな)

Secondhand Daylight(Magazine)

(久々に聴いてみることにしたり)


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