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何気なく入った刀削麺の店でメニュー見てたら、点心のところに、羊肉泡糢というのがあって、西安風のナンのようなパンをどんぶりに入れて上から羊のスープをぶっかけた食べ物みたいな説明が出ていた。食いたい。羊は好きだし、小麦粉の塊に汁をかける食べ物は好きだ。
で、それを頼んでしばらしくしたら、どんぶりに白くて四角くて平たい糢(という字がそれを示すのだと思う)が3枚ほど入って出てきた。はて。スープは?
店の主人が、「このくらいのサイズに千切れ。終わったらスープをかけるから呼べ」と言って、どんぶりの一角を指差して消えていった。みると、スズメのえさのように細かくちぎった糢が数片落ちている。
まさか、この細かさはないだろうと千切ろうとしたら熱い。蒸したてというか焼きたてというか、すごく熱くて千切るとか無理だろう。でもまあ、しょうがないので、普通のクルトン程度の大きさに千切って、時々つまみ食いしてまあうまいから、あんまり小さく千切ると歯ごたえとかなくなってつまらんし、とにかく熱いから2センチ四方あたりにすりゃ大丈夫だろう、とか考えながら手を腫らして、とりあえず全部千切ったので店の主人を呼んだ。主人、どんぶりを一瞥して
「最初に示したサイズにはほど遠い。これではでか過ぎておいしくない。もっと細かくやれ。できたら呼べ」
と言ってこちらの動きを見張っている。なんという罰ゲーム。しょうがないので、2センチ四方をさらに4分割して1センチ四方くらいにしていくが、やはり熱い。
「面倒かも知れないが、細かいほうがおいしいよ。おれなんか西安でビール飲みながら適当に千切っていたら、店のやつにばかやろうと怒られたものだ。もっとも、でかいまま食う人もいるがな。でもそれは邪道だ。というか、人によって食いごろのサイズがあるのだが、とにかくまずは細かく千切れ。面倒だろ?」「いや、面倒というよりも熱い」「うむ。それはそうだが、冷めると千切りにくくなるから我慢しろ」どうも我慢前提の食い物らしい。
で、さんざんでかいでかいと文句を食らいながら、どうにか千切ってどんぶり渡すと、羊肉が4片くらい入ったスープが入って、パクチーとらっきょうと豆板醤が入った小皿と一緒に戻ってきた。「西安じゃにんにくかじりながら食うが、家ではらっきょうだ。好みに応じて入れろ。あと、でかすぎるのは家の女の子にいって小さく千切らせたから感謝しろ。だいたいにおいて西安というのは貧乏人ばかり住んでいるから、パンをスープにつけて見た目の大きさを増やしたこういう貧乏くさくて腹が膨れる料理が多いんだが、特にこいつはいいね。腹がふくれるよ。本場のはもっと羊の脂がぎとぎとに浮いていてまっ黄色なんだが家のはそこまではしてない」というような意味のことを言って去っていく。というか、いちいち注文が多い料理店だが、初めて食う料理だから言わせておいて聞くしかないのでどうにもしょうがない。
で、食ったらどえらくうまかった。というか、確かに細かく千切った部分のほうがうまい。結構、味が強い(基本、羊と塩みたいだが)から、でかすぎると一口あたりに染み込んでいるスープの量が多くなりすぎるからかな? あと、確かに満腹しまくり。
というわけで、指を火傷した(もう治った)が良い経験をした。今度食うときはもっと細かく千切ることにしよう。
ジェズイットを見習え |
次回はクッキング鋏等々、一式準備の上ということで。<br>#「耳の後ろもクリームつけた?」とか言われなくてよかったです。