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子供がダンブラウンがおもしろいので、これを読めとロストシンボルを貸してくれたので読んだ。
曰く、何がおもしろいかと言うと(と、最近は美点を説明するようになった)
1. 常に時間との闘いがあり、切迫感がある。この物語の中でも全体の時間とその間に細切れに設定された時間がある
2. 追いかけっこが常にあり、その緊迫感が1と併せて盛り上がる
3. 敵対する側の描写が挟まり、その複眼的な視点によりああそう来るのかという意外性が形作られてそれがおもしろい
4. 暗号のような謎が提出されることで、その謎をどのように解析するかの知恵の発動が興味深い
とからしいが、それに加えて、歴史的建造物などに対するトリビアがおもしろいというのもあるかも。
で、実際、どえらくおもしろくあっと言う間に読み終わるわけだが、存外拍子抜けというか、ああ、これは日本じゃうけねぇかもなぁ感が残った。
で、実際にアマゾンから書影を引っ張るために眺めても、あまり評判も良くないようだ。
なにしろ、下巻のほうには8人のレビューがあるのだが、上巻の26人に比べるとずいぶんと少ない。世界的ベストセラー作家のエンターテインメント小説としては、大してアピールしていないと言えるだろう。
理由は2方向から考えられる。
おれのがっかり感は、おれの異文化受容性によるものらしい。一番の緊迫を生み出す理由が、おれにはまったく理解できない。それは世の中には愚かな人間が存在することは知っているが、それにしても、あまりにもどうでも良いことに感じる。そんなことのためにCIAの偉物が駆けずりまわって大騒ぎするというのがむしろ驚きというか。が、おそらくそれはおれの感覚の問題なのだろうということでそれは良い。というか、不思議に思って子供に「あのくだらない理由で大騒ぎしているってことで納得した?」と訊いたら、やはりそこはスルーしていたらしいから、物語の大山場の種明かしが、大山鳴動ネズミ零匹みたいなもので、これは結構効いているんじゃないかなぁ。
異文化受容に関する小話が本書の最初のほうに出てくる。主人公のラングドンが大学でいろいろな宗教の説明をしていると、学生たちが偏見丸出しにするので、次のように語る。「諸君、では私の属するカルトについてどう感じるかね? そのカルトは古代の太陽神ラーの祝祭の日になると、古代の拷問具の下に跪いて、血と肉体の儀式のための象徴物を貪り食らうというものだが」。で、だからどうした? とかふつうに感じると思うのだが、物語上はインテリなはずの学生たちがいっせいに恐怖におののくというように描写しているから、物語の前提として、少しでも異端的なものを差別するのが当たり前の社会である、ということがあるのだろう。それにしても、極端な前提だなぁ。
もう一つは、おそらくそのほうが重要なのだろうが、どれだけアメリカの建国の歴史(というか、時代精神というか、ジェファーソンとかフランクリンとかワシントンが傑物揃いだったか。おれはペインを加えたいけど)が知られていないか(したがって興味を惹かないか)ということと、存外フリーメイソンに関する陰謀論が知られていないということだろう。したがって、扱っている題材が大仰なわりにほとんどの読者がまったく興味を持てないのかも知れない。せっかく、主人公の一人は日系のすごい人なのだが、それはアピールポイントにはならないしな。
でも、おれはそっちのほうはそれなりに楽しめた。
陰謀があるかどうかはどうでも良いが(レッセフェールのほうがむしろ富が増えるので妙な陰謀とかは巡らさないだろうと思うけど)、確かに本書の影の主役たるソロモン一族のような一族は世の中に存在するらしくて、その昔、広瀬隆の描いたロスチャイルド本とかは興味深く読んだ覚えがある。それで、ああ、確かにそういう一族ってのが世の中にいるなぁとか納得してみたり。
あるいは、東京タワーの根本に確かに存在しているロッジとかを眺めたこともあって、本当にフリーメイソンってあるんだなぁとか。でも、すぐ近くの霊友会のほうがよっぽどおれの生活圏に対して良くない影響があるようだけどな。石原とか。
それにしても、アメリカの中心的な建物に単なる樵(比喩だけど)の正直少年が神格化する画が掲げられているというのにはびっくりした。そんなものがあるとはねぇ。テクノロジーと宗教の融和ってのがアメリカなのか。
(それにしても、まずはこれを読んでからだ、という気にはなる)
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