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knuさんの日記を読んでいて思い出した。子は育つ、親も育つ
随分以前の話だが、大学時代の友人が久しぶりに家に遊びに来て、まあつもる話とかも一通り終われば、他に話すこともなくなって、そこで自分の子供のことを話し出した。こんな話だ。
近所に動物園(多分、想像すると千葉公園とか井の頭公園のやつみたいな小規模なやつだと思う)があるんで、子供を連れて行った。そうしたら、妙に猿山が気に入ったらしい。それで、しょっちゅう、猿を観に行こう、猿を観に行こうとねだるんだ。
仕事から早めに帰って、さあ一休み、と思うと、猿を観に行こう。
今日は休みだからちょっと二度寝、と思うと、猿を観に行こう。
ある日、うんざりして、お父さんは本当は猿が嫌いなんだ、だから本当は行きたくないんだ。
と言ってしまった。
子供はびっくりして訊きかえした。なんで?
実はお父さんは子供のころ、やっぱり猿が好きでしょっちゅう観に行っていたんだよ。そこの動物園は柵の向こうに猿がいるんだ。で、お父さんは柵に掴まって観ていたんだ。
すると一匹の猿が近づいてきた。と思うと猿は柵の間から手を伸ばして、さっとお父さんの帽子をひったくって向こうへ行ってしまったんだよ。びっくりしたし、取られちゃって悔しくてお父さんは泣いちゃったんだ。それから、お父さんは猿が嫌いになったんだ。
すげー出まかせだ。と俺がつっこむ。
いや、実は本当の話なんだけどね。
そうなの、お父さん、ごめんね。と子供がすまなそうな顔をしたもんで、しまったくだらないことを言ってしまった、と反省して、結局、その後も猿山へ行ったんだけどね。
ところが、それからも猿を観に行こうとねだるんだけど、それまでと1つ違ったことがある。猿を見たあとに、こっちの顔を観て、「お猿さん、悪いんだよね」とおれに憤慨してみせるんだ。ついでに猿に、「お猿さん、お父さんの帽子を取っちゃだめなんだよ!」と怒ったりするんだぜ。いや、その猿はおれの帽子は取れないと思うけど、どうも、おれが猿を嫌いといったのをやつなりに解釈して帽子の心配をしてくれているのかも知れない。いずれにしても、おれに気を遣っているのは間違いなさそうだ。
やー、本当、子供にくだらないことを言っちゃだめだなぁと痛感したよ。でも、本当に子供っておもしろいよなー。
と、そんな話だ。
その友人が帰ったあと、妻(まだそのころは違ったが)と、猿の話はおもしろかったねと話し合ったのだった。で、妻が言うに、この年になると子供の話を聞かされることは多いけど、お前の子供のことなんか知ったことかっていうようなつまらない話ばかりだ。でも、あの人の話はずいぶんと面白かった。どうしてだろうと考えると、どうも客観性があるからみたいだ。ああ、確かに、とおれも応える。
それを思い出したのだった。
同じく、siroさんのてんぐしゃーんを読んだときは面白すぎて死ぬかと思ったものだ。というか、今読み返してもやはり死にそうだ。
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