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日々の破片

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2011-11-20

_ 空を飛ぶ三銃士

三銃士を観に行った。テンポがやたら良すぎることを除けば、娯楽作品としては相当な出来映えで、実におもしろい。だいたい、スティームパンクよりさらに200年以上さかのぼったホットエアパンクというか、やたらとごてごてした軍艦の熱気球が空を飛ぶだけで観ていて気分が良いのだから、そうそうつまらなくなるわけがない。もっとも始まっていきなりナレーションが英語なのでえらくとまどった。考えてみれば当然だが、一体何語を話しているのかとわからなくなった。でも、それなりにパノラマを使って歴史背景をぱぱぱと説明して三銃士のコンテキストを説明する序盤からいきなり快調でこれは良い。

ただ、何しろ出てくる人物が小僧のダルタニャンを除けば全員が髭なので、これが引っかかる。引っかかるといっても作品上は人物の性格付けと立ち位置、衣装、すべて実に巧妙なので、三銃士(知謀と陰の男アトス、イケメン神父のアトラス(追記:なぜか最後までアトラスと書いているが、頭の中ではアラミスと書いている。候補がでた時点で確認せずに確定してたってことだな)、マッチョトポス)、ルイ13世(もちろん王様だが、これも小僧なのでいろいろある)、リシュリー卿(もちろん大人物だが、物語上は悪役。何しろ誰よりも高みにいるので、チェスも1人で二人分をやっているくらいだし、実は剣の腕も立つらしい(練習している))、バッキンガム卿(フランス人にとっては悪いイギリス人だが、イギリス人にとっては当然良い人)、まあ片眼(海賊船の船長っぽさを出すためにそうしたわけじゃなかろうが)と太っちょは別として、全員、ちゃんと区別がつくのだが、似たような顔をどうしても連想してしまう。すると、アトスはホームズだし、アトラスはオーランブルームだし、でもバッキンガム卿もオーランブルームだし、ポトスは(これが思い出せないのだが、どこかで見た顔にえらく似ている)、で、とどめがルイ13世でどうにもmput氏に見えてしょうがない(髭のせいで別に顔が似ているわけではないと思う)。

後は、ホームズでも妙な違和感を覚えたのだが、チャンバラとかの最中に急にスローモーションにして動きを見せる演出って、おもしろいのだが、そろそろ飽きが来たような感じだ。もっとうまい見せ方ってないのだろうか、とかが、引っかかったところかな。

で、おもしろかったのだが、その一方で、どうにも退屈する面があって、それが不思議でいろいろ考えたのだが、結局、作家の映画ではないという点に尽きるようだ。

物語はそれなりにおもしろく、演出のテンポは良く、殺陣は魅せる、セットは豪華で、仕掛けも良い、役者は達者でスタントは素晴らしい、が、なんというかタメが無いのだ。え、もうこれで次のシーンへ行くのかという妙な中途半端感があって、それが退屈さにつながるようだ。

で、そのタメのなさってのは、twitter140文字的な時代の特徴かなぁとか最初思ったのだが、おそらく違うのだろうと気付いた。

属人性の排除もここに極まれりというやつなのだ。もう、監督は作家ではなく、単に監督しているだけなのだ。したがって、脚本に書かれた物語が順にタイムラインに沿って流れる。タメといった作風、芸風、まさに属人的にしか表現されないものを排除しているということだ。

で、それは退屈さにつながるつまらなさなわけだが、その一方で娯楽作品には不要であるとする考え方もわからないでもない。映画は産業だと考えれば、作家の属人性はないほうが好ましい(が、リチャードフライシャーのような職人監督であっても作家性と無縁ではないわけで、ある意味、ここまで単に物語だけが進んでいく映画も珍しい。へたなタメ(作家性)ならない方が良いわけで、その意味では良いのだが(しかもうまいわけだが)、なんとも割り切れない感じが残る)。

と、あまり意味を持てない不満はあるわけだが、実におもしろかった。

最後にバッキンガム卿の服の色が赤だったか、それ以外だったかをちゃんと見なかったのだけが心残りだ。


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