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国立西洋美術館で、ユベールロベールの企画展。企画自体がうまくて(時間の庭とは言い得て妙だ)、まったく退屈知らずの約2時間を楽しんだ。
おもしろかったのは特に3点:
・ベルサイユ宮殿の一部とは言え成功をおさめた庭園デザイナー(その他にもいくつも手がけているし、最初のルソーの墓碑のデザイナーでもある)で本国では知られているらしいのに(画もどう考えても嫌う人はいなそうな明解さと美しさをもっている)、なぜ、フランス大好き日本で全然無名なの? という驚き。
・廃墟を描けば19世紀末には人類滅亡を予感させる陰鬱なものになるわけなのに(ベルギー頽廃派とかがまさにそうだ。というか廃墟になりそうなブルージェとかだけど)、廃墟は自然の中に朽ちて溶け込んで(倒木の画が何点かあったが廃墟はおそらく植物化した何かなのだろう)、そこで洗濯女が労働し、赤ん坊があやされて新しい生活があふれているという、健康的というのもともちょっと違う、ありふれた日常風景になっている(明るい未来があるべき過去と現在というか)、なるほど、もうすぐ市民革命なんだねぇーという感が溢れている。(もっとも本人はルーブル宮に住み込んでいたらしいから、まったく庶民というのとは異なるけど、でも時代の空気は時代の空気ってやつなんだろう)
・で、革命後は投獄されたそうだが、その間に牢屋の中で制作して横流しして稼いだらしい絵皿が、ほーこれこそ労働者リアリズム(じゃないけど)という、ギロチンで首が次々落ちている時代に妙な生活を送る不思議さ。
・最晩年のベルサイユ宮の庭園の大作(自分がデザインした人工洞窟の画)が、えーと驚くほど緻密な駄作(技術的にはうまいんだろうし、構図は良いと思うのだが、60年代の画と違ってなんかべたーっとしていておれにはつまらない)で、はて、この人は一体なんだったのか? と最後に大きなクエスチョンが残るおもしろさ
満足しまくった。
Futures & Ruins: Eighteenth-Century Paris and the Art of Hubert Robert(Dubin, Nina L.)
その他:
・赤いチョークと黒いチョークで突然、豊かな色彩を感じさせる温泉から見た風景(というような題のロシュフォールの家で発表したらしい作品。題は忘れた)の画が、それまでの油彩や単なる赤チョークと異なって、すごく印象的だ。なんか、とんでもなくいい画だった。(廃墟関係なし。洗濯女系の画かな? 色彩だけ覚えている)
・おれの印象では、廃墟(遺跡)には2種類の描き方があるのではないか。細部の意匠に着目する方法と、全体の構造に着目する方法。でも、この画家は突然細部の意匠に着目したりもするが、この画を描いている現在の枠組みの中に当てはめることを第一義としているように見える。
名付け親(本当の父親かも知れないし、父親の雇い主かも知れないし、そんなことはわからない)は、脚韻が好きなのは間違いなさそうだ。
・同時開催のピラネージの牢獄も観たかったが、疲れたのでまた今度。
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