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アスキーの鈴木さんから、Developer's Codeをもらった(例によってレビューに参加したからだ)ので紹介する。
良い本です。どう良いかは順に書く。
これは、ちょっと電子書籍向き(実際、おれはレビュー用のPDFを中華7"パッドに入れて通勤中に読んだ)なんだけど、物理書籍としても薄くて軽いから、悪くない。
著者は、Cheungという名前だから、多分、東洋系のアメリカ人(帰化しているかどうかとかは全然知らん)。
謝辞がいきなり、草稿をいろんな出版社に持ち込んだけど、こういうのは売れないよ、で終わってばかりだったけど、アンディとデイブが救ってくれたとかで始まる。
確かに、絶妙なタイミングの絶妙な本だ。
(もちろん、おれは、これが売れれば良いと思っているのでartonx.orgの下の1つのURIをこの本に割り当ててるのだ)
何が絶妙かといえば、この本は、大学出て、ベンチャーで働いて、多分挫折して、でもやっぱりこの業界(というよりも、システムの世界)が好きで戻ってきて、多分起業して、大成功はしていない(だって、みんなCheungって名前知らないよね?)けど失敗もせずに、まあどうにかやってきている30半ばの男が、これまでの自分とこの業界のかかわりかたと、そこで見て聞いて実践して成功したり失敗したり反省したり誇りに思ったりした、いろいろなことを(いくつもの出版社に売り込みに行って断られてを繰り返してもめげないくらいに)文章としてきちんと仕上げて、みんなに伝えたいと考えた内容の本、そのものだからだ。いかにも、いろいろ一段落した感じに成熟してきたWeb回りのビジネスの時代に合った絶妙の本だとおれには思える。
内容は雑多で(でも、各章が前章の引きに続いているので流れるインターフェイスっぽいんだよね)、エッセイ集というか、一番雰囲気が近いのはジェエルだけど、(おれが読んだ限りでは)ジョエルほどは如才なくない。(いかにも、一回は挫折したっぽいところはある。というよりも、副題のとおり(翻訳の新丈さんも書いているが)「本物のプログラマ」っぽいのだ。ジョエルって本物のプロダクトマネージャであってもプログラマって感じは受けないよね?
内容は雑多なので、これ! ということは無いんだけど、技術よりの内容(異様に現実主義のリファクタリング論とか)から、いかにも起業した人なんだなという後進へのアドバイス(ローンチ最重要、プライベートとの切り分け、専門家よりも多様性など)、突如はじまる計算量の説明、どれをとってもそうそうから、ほーそういうものなんですか(おれは伝統企業で働いているから発想が異なるベンチャー的な思考術から学べることが多い)まで、実におもしろい。
元の語り口も(おそらく)軽妙、新丈さんの訳は調子が良く(でも、kdmsnrさんよりはコンサバで、これはこれで好きな人は多そう)、適当に入っている原書のくだらない一コママンガ(突然、星新一がアメリカ一コママンガのファンで評論集を出していたのを思い出した、と脇道にそれる。それでおれはこういうのに親しんでいるだな)も味わいがあり、軽く読んで、いろいろ考えさせられる、つまり良いエッセー集だ。
Developer's Code 本物のプログラマがしていること(Ka Wai Cheung)
特にこんな人にお勧め:
Web系(に限らないけど)IT系ベンチャー(SIじゃなくて)ってどんな感じで、どういう人材が求められているのかなぁと考えている学生(日本とアメリカの違いは、このあたりの考え方についてはそれほど差はないとおれは思う)
Web系のベンチャーの若手:ロールモデルとは言えないけど(そこまでかっちりした本じゃない)、得られるものがあると思うよ。
Web系ベンチャーの中堅:同じような(対顧客系)悩みについてのあれこれがおそらくヒントになったり、背中後押しされたりすると思う。
SI系の若手:こういう業界もあるんだよ! というのをまとめ読み
SI系の中堅以上:こういう考え方のビジネスについても知っておこう
それより上(地位じゃなくて年齢とか)の人(おれ含む):なるほど!と思うこと多い。例)他人の褌になるけど、柴田芳樹さん曰く「マーカーをたくさん引きそうな内容の本」
Developer's Codeについて書くまでもないかなぁと思ったが、というのは、そうするとそこだけ立ち読みすりゃいいやってことになりかねないんだけど、それじゃ伝わらないだろうからやめとくかと思ったわけだけど、やはり書いておくと、もちろんふつうの本と同じく一番重要なことは最後に書いてあって、それが第8章のプライドというやつだ。
うーん、まあ、これはやはり誰かが書くべきことだろうし、それがたまたまCheungだったってことなんだろうけど、この第8章を堂々と書いているってことがこの本の一番の美点なんだろうな。
で、#p01のほうに誰がこの本を読むべきかとしていろいろ書いたけど、最初から7章までをもしちゃんと読めたとしたならば(というのは第8章だけを切り取るとコンテキストの妙な側面だけが強調されそうだからだけど)、本書は、プログラマではない人が読むべき本なのだ。
もし自分がプログラマならば、本書を家族にプレゼントするってのももしかしたらありなのかも知れない。プログラマというのはこういうものだよ、と言葉を添えて。
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