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昔々、家電を買うということは、定価で百貨店の家電売り場で(引き出物、新居祝い、出産祝いなどハレの商品として)買うか、町の電気屋さんで買う(そして運んでもらい、取り付けてもらう)ものだった。
光速エスパーが店頭で腕を上げていれば東芝のお店。
黒い服来た頭でっかちの妙な小僧が立っていればナショナル。
赤い服着た青いオウムだか九官鳥だかなら日立。
光速エスパー DVD-BOX Limited Collection(特撮(映像))
やたらほっぺが膨らんだリスがサンヨーだったような。
ソニーは記憶にないなぁ。ビクターの白い犬はナショナル小僧の横に居るのかな。三菱も記憶にない。記憶にないのは、おれが住んでいた町と祖父母が住んでいた町に、それらの家電の店が無いからだ。したがって、家にはソニーや三菱の製品は無い。
という、家電は町の系列店で買う時代というものは昭和を覆っている。たぶん、嘘(ゲートキーパーが撒いたデマじゃないかと思うのは、原宿駅前にビデオの実験ギャラリーがあったころ、そこの主人からここだけの話だけど、と聞かされたからだ。そんな話をベータ系の機器で固めたギャラリーのオウナーに聞かせることができる人間は限られている)だろうが、VHSがベータを駆逐したのはナショナルのお店が楽しいおまけを付けるからで、ソニーはそういうことしなかったからだというような話が成立するのは、どちらかの製品を購入するかは店の選択時点で決定されるからだ。素直に考えれば、ソニーの技術力と企画力では2時間(日曜洋画劇場とか、水曜ロードショーとかいうような2時間枠の番組が当時は毎日あったし、野球がだいたい2時間だというのも重要だろうな)録画ができなかったからだろう。技術ってのはそういうものだ(現代の例:アルミ削り出しという技術力)。にもかかわらずソニーのほうが技術力があるのにと、したり顔で語るのを見て、こりゃだめだなと思ったものだ。というわけで、現在の原宿駅前にはビデオの実験ギャラリーは影も形もない。
さて、そういう時代に、まれに富士通ゼネラルとかNECとかの家電を見かけると、それは安物で売っているのは家電の通常の文脈から外れた(たとえばスーパーの特設会場とか)場所で、こういうのは2流、3流なのだろうな、と考えてしまうのだった。
というようなことを、地下鉄のドア上の良い位置にどーんと貼られているダイキンの広告を見て思い出す。
ダイキン(DAIKIN) 加湿空気清浄機「うるおい光クリエール」 ホワイト TCK70M-W(-)
系列店で家電を購入するのが当然の時代であれば、ダイキンはOEM用の下請けメーカーに甘んじるか、業務用として人知れず評価されるかしか、なかっただろう。(NECや富士通が家庭にPCを携えて殴り込んできたときも、売り場はPCショップ(上新とか)という専門店であって、家電屋は系列のMSXを売っていたのだった)
あるいは、ホシザキの自動皿洗い機や、岩通の電話機とかもそうだ。
JWE-400TUB-H ホシザキ 食器洗浄機 アンダーカウンタータイプ(-)
というわけで、町の家電屋さんがどんどん消えていき、町を彩る妙な人形はマックとサンダーズと、サトちゃん、コルゲンのコーワカエルのファストフードと薬屋だけになってしまったわけだが(人形並べるタイプの系列薬屋ではサトちゃんだけは元気だが、あとはどんどん消えているように感じる)くらいになってしまったが、でも、これって良いことだったとしか思えないな。
と、家のダイキンのエアコンを眺めながら考える。
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