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イメージフォーラムでポルトガル、ここに誕生す。
台風が来ているので10時を回ってもフォーラム員が来ない。結局映画が始まっても客は10人を割っている程度だった。
で、映画もとんでもなく微妙きわまりない。
監督たちは申し分ない。というか、現在考え得る最強の布陣とも言える。カウリスマキ(なぜかポルトガル在住らしい)、ペドロ・コスタ(最強リアリスム映画作家)、エリセ(隣のスペインからの友情参加なのかな)、オリヴェイラ(映画界最高齢というか、100を超えているんじゃないかな)、ようは短編集で、EUが各国に作らせている映画のポルトガルの巻らしい。
カウリスマキで始まる。バーテンがスープを作り始める。ランチ用だ。ランチ間際にさえない男たちが数人来る。誰もスープを頼まない。バーテンはテーブルを用意し、看板へランチメニューとしてスープと書き、通りにもしゃれたテーブルセットを用意する。
しかし誰も来ない。
外に出ると、大通りに近い店は客で行列ができている。
バーテンダーの店は小路にある。
しばらく悩んだ末、鍋に無造作に干し魚を突っ込む。
看板をスープから漁師風シチューに書き換える。
が、誰も来ない。ついに、メニューにしばらく外しますと書いて外へ出て、ライバル店へ入り、そこのシチューを食べる。
あまりの美味しさに舞踏会の幻影が浮かぶ。
そのまま夜に入り、花束を手にバスから降りる女性を待つが、来ない。花束を捨てて家に帰り、寝る。
映画としてはどの瞬間も映画なのでおもしろいことこのうえないが、しかし、これのどこがポルトガル誕生す、なんだ?
で、すぐさまペドロコスタのカーネーション革命に入る。ちらしによると、コロサスユースを撮った時に主演男優が、カーネーション革命でおれたち移民は殺されるんじゃないかととても怖かったと語るのを聴いて衝撃を受けたと書いている。民主化の無血革命にもかかわらず、つまり、自分たちポルトガル国民にとっては完全無欠な理想的な革命であったにもかかわらず、移民の彼らには恐怖を与えた。
かくしてカーネーション革命における恐怖を映画化したらしい。エレベータの中で黒人男性。顔をテカテカに塗った兵士がいる。あとはまったく記憶にない。
そのままエリセへ続く。かって欧州2位の繊維工場だったが現在は倒産し封鎖された工場で、かってここへ勤めていた労働者たちをかっての大食堂で映画出演への面接をするというテストの映画のテスト。
ドライヤーの映画みたいだ。しかも語られる言葉は興味深く、かっての労働状況が必ずしも理想的ではなかったことなどが述べられる。複数の視点、複数の語り口。が、途中で意識を失う。
気付くと観光旅行の一群が観光名所を案内人に連れられて移動していた。オリヴェイラの映画が始まっている。
銅像。旅行者が銅像にいたずらをしないか見張る騎兵隊(4人の冴えないおっさんが馬に乗る)。いたずらをしないとわかると撤退する。銅像はかって支配したが、今は観光客に支配されている。おしまい。
どこまでが正しい内容でどこからが魔術的なナレーションなのか映像なのかさっぱり見当がつかない。
この映画ではほとんど記憶にないペドロ・コスタだが、映画作家としての才能が普通ではないのはこれまで観た映画からは明らかだ。どこまでテンポに乗れるかは、そのときの調子に依存するので、ある意味、体力が必要な作家だ。
ふと気付いたが、カウリスマキのはポルトガルの現代史なのかも。
こじんまりと裏通りで営業しているが、気付くと時代から取り残されてジリ貧となっている。
隣のスペインはフランコ独裁とかあったかも知れないがなんとなく西側諸国としてそれなりにうまいことやっているようだ。
真似してみるが、どうも的外れでうまく行かない。
カーネーション革命(バス停で待つとき手にしていた花束はカーネーションではなかったか?)を起こしたが、待ち人は来ない。
孤独だ。
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