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日々の破片

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2014-06-17

_ トマトの味には歴史がある

トマトはこれまで何度も味を変えてきた。

その都度新しい発見があったし、大抵の場合、新しい味のほうに魅力があったので、ハーゲンダッツが妙なトマトのアイスクリームを出したのは歓迎で、当然のように食った。

ハーゲンダッツ スプーンベジ 12個セット(-)

悪くない。

でも、たぶん、受けないかなぁという気もする。

トマトの味の変遷について考えてみよう。

物心ついたとき、トマトは塩を振って食べる野菜だった。

それからしばらくしてカゴメやデルモンテからトマトジュースという飲み物が発売されて、これも塩が入っていた。

スイカに塩をふるのは甘味を引き立てるためだそうだが、そういうのとは異なる雰囲気だ。

そのルールを変えたのが、1980年代の中ごろで、カゴメが朝市というトマトジュースを出してきたときだ。

塩を完全に抜いてきたのだ。

巷にあふれるゲーという声。それはすごかった。

が、おれは、2回目から塩がないほうがうまいじゃんと思った(初回はなんじゃこりゃと思ったのだが、何となく惹かれるものがあり、2回目飲んだ時はすっかり好きになってしまったのだった)。

でも圧倒的な不評の前に、朝市は比較的すぐに市場から消えてしまった。

デルモンテ 食塩無添加 トマトジュース900g×12本[機能性表示食品](-)

(今は食塩無添加が当然だが、1980年代の日本人にとって塩抜きトマトというのはあり得ない味だったらしい。愚かだが、味覚保守主義というのはもっとも広範に支持を獲得している主義だそうだからしょうがないのだろう)

が、その後、減塩はヘルスィーとか騒がれだしたのにつれて、朝市ほど過激に無塩にはしないまでも、塩の量は徐々に減っていったように思う。とはいうものの、おれは朝市で、塩抜きトマトジュースのうまさを知ってしまったので、以後塩が入ったトマトジュースは飲まなくなった。

さて、それからしばらくしてタイへ旅行するために蘭のマークのタイの飛行機に乗ったのだが、飲み物を聞かれて何気なくトマトジュースを頼んだら、これが衝撃的においしい。

これまで飲んだことがないトマトジュースなのだ。

で、缶を眺めて内容物を見て仰天した。sugarって書いてある。

ここでおれは初めて砂糖とトマトの組み合わせを知ったのだった。が、これは塩のトマトジュースとも、塩抜きのトマトジュースとも異なる、別の美味しさだった。

帰国後、土産話で砂糖が入ったトマトジュースの話をすると、全員が全員、まずそうだの気持ち悪いだのネガティブな反応ばかりかえってきて、いやお前ら無塩トマトジュースを今は飲んでいるが朝市が出てきたときもゲーゲー言ってただろ、自分の舌と鼻で味を判断しろよなとか思ったのをよく覚えている。

その後、二度とタイには行かなかったし、彼らの反応が日本の市場の大勢なのだろうということで、砂糖が入ったトマトジュースを日本で見ることはなかったので、タイ航空で味わったトマトジュースの味はおれにとって幻の味となった。ハーゲンダッツのチェリートマトアイスが来るまでは。

一方、それとは別に、アメリカへ行くのに飛行機に乗り、ここでもトマトジュースを頼み、缶のでかさにびびりながら、渡された紙コップに注いて(それで1/3くらいか)飲んで飛び上がった。塩辛いのなんのってちょっとあり得ないだろう。昔(朝市より前)のトマトジュースってこんなに塩がきいていたのか、それともアメリカ人は極端な味覚なのかどちらだろうか(ジンを薄めるのに使うとかかなぁ。それにしても塩が効きすぎていた)。

で、さらに驚いたのは、缶に塩分の取り過ぎに注意と表示があって、成人の1日あたりの許容できる食塩量が書いてあるのだが、そのトマトジュースには余裕で成人3日分の食塩が入っていた。ばかじゃねぇか?

というわけで、アメリカでトマトジュースを飲むことは無いだろうな(が、あまりに塩辛いのが逆におもしろくて、帰りの飛行機でも注文したのだったがもう少し塩分控えめなやつが出てきたような記憶がある)。

いずれにしても、ハーゲンダッツのおかげで砂糖のトマトが市場に出てきたので、仮に朝市のようにすぐに消えたとしても、開いたパンドラの箱はもう閉まらない。甘いトマトジュースが出てくるのが楽しみだ(が、甘い飲み物は基本飲まないので、出てきても飲まない可能性のほうが高いな)。

本日のツッコミ(全3件) [ツッコミを入れる]
_ atsushieno (2014-06-17 03:39)

東南アジアだと果物としてトマトを食べるのが一般的なのかも。台湾だと果物として扱われていて、パックで買うと中に砂糖が入っていたりとかします。うめトマトジュースなんかも売っていますし(なかなかうまい)。

_ matsu_hiroshi (2014-06-17 05:02)

インド料理で砂糖たっぷり真っ赤なトマトのチャツネが出てくることがあります! イチゴジャムでは出ない酸味、プーリー(ナンもしくはチャパティを揚げたもの)と一緒に食べるとお茶の進む絶品です

_ arton (2014-06-17 07:58)

>atsushienoさん、うめトマトジュース飲んでみたいですね。おいしそうだ。<br>>matsh_hiroshiさん、トマトのチャツネ、おいしそうですね(そうか、チャツネってジャムと考えてもいいのか)。これも食ってみたいな。<br>(一方、メキシコではサルサにするけど、これは違和感が無い食べ方だな)


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