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風邪引いて寝込んでいても腹は減る。
面倒くさいから大根の味噌汁を作るか、と大根を適当なところで輪切りにして皮剥いて、さらに薄く輪切りにして、半分は銀杏、半分はサイコロに切る。だし汁に入れて透明になるまで茹でてから味噌を入れてかき混ぜて出来上がり。簡単なものだ。
中学生の頃、その年に芥川賞をとった森敦の月山がはやった(周囲の3人くらい)。薄いのですぐ読めた。
私小説の類だったので、文章のうまさというのは読んでいてわかるのだが、まったくおもしろくもなんともない。
が、その中にえらく印象的なシーンがある。後で読んだ連中と語らうと、皆が皆、そこの印象だけだった。
その後、何かのおりに同じく月山を読んだことがある連中を知ることがある。すべて、同じ個所の記憶であった。
僧房で筆者(私小説なので実際の筆者かどうかはともかく、一応は筆者)は味噌汁を振る舞われる。何もないところですし、肉食はできません。大根だけは良くとれるんですよ、とか言い訳しながら坊さんが椀を差し出す。
中には、短冊、賽子、銀杏に切った大根が入っている。
贅沢だな、と筆者は感じる。それぞれの切り方にそれぞれの味わいがある。
実際にやってみると、特に短冊の贅沢っぷりがわかる。銀杏はどうってことない。賽子はどちらからも作れる。しかし短冊に切るのは面倒だ。それでおれの大根の味噌汁には短冊は滅多にない。
それでもなんとなく月山の僧房を思い出しながら贅沢ですなぁと考えながら食べるのであった。
B009DECP2U
(つい、アマゾン評を読んでびっくり。全然、つまらない私小説ではないらしい。子供の頃の記憶というか読解力ってのはあてにならないなぁ)
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