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アマゾンを眺めていたら、唐突にお勧めに萩尾望都が出てきた。それで思い出して佐藤史生を調べたら(フラワーコミックなんかで結構手元にあるのだが、ワン・ゼロはどこかに失くしてしまったとかいろいろあってkindle本になっていたら買い直しても良いなぁと思ったのだ)、復刊ドットコムで出まくっているのを知った。物理的な本は場所を食うから嫌だなぁと思いながらつい手を出した中に、金星樹があって、これは持っていたような記憶があるのだが本棚に見つからなかったので注文したのだが、実際には完全なまでに初見だった。
激しくおもしろかった。し、衝撃を受けた。
冒頭に収録されている『星の丘より』だ。
画が拙いなぁと思ったが、しかし物語のうまさに当然デビューした後に夢みる惑星の前日(といっても数千年以上前)譚として書いたのかと思ったら、筆者後書きを読むとデビュー用の持ち込み原稿だというのだ。いきなりこんな作品を書いてしまうってどういうことなのだろう? (SFではデビューさせられないということで実際のデビュー作は別の作品らしい)
テレパシーを持つのが普通の人間という世界が滅びかけている。生まれてくる子供たちのミュータント率が上がっているのだ。ミュータントはテレパシーを持たず、孤独な世界で泣きながら生まれてくる。王家の待望の皇子もミュータントだった。そのため、ミュータントの村に送り込まれる。そこではテレパシー能力を持たない人々がその代りに科学という体系を作ることで生存方法を見つけて暮らしている。彼らは水に溢れた第3惑星への移住を考えている。
1977年に発表されたということは書いたのは1976年あたりかも知れない。重要なのは、ここで書かれたミュータント達が独特なセグメントにあることだと思う。
青い犬という奇妙な味の作品について後書きにはデビューして3年目の作品とあるけど、3作目の書き間違いとしか考えられないが、どうしてそういう書き間違い(誤変換とかできる時代ではない)をしたのかが不思議だ。
一角獣の森でという作品が当時の少女漫画の表現的な限界をいろいろ考えさせてくれるのがちょっとおもしろかった(作品はなかなか奇妙な味わいがあってそれはそれで少女漫画らしいのだけど)。
それにしても、レギオンというルシフェルが神々に戦いを挑む作品についての解説が楽しすぎる。宗教団体のパンフレットをつい買ってしまって読んだところ、神の千年王国の退屈さにゾッとして作品になったというようなことが書いてあるけど、それでルシフェルが実に楽しそうに反逆しまくるわけか、と納得してしまった。本当に楽しそうなのだ。(それは青い犬もそうだし、一角獣の森のミュータントもそうだ。佐藤史生の作品は、そういえばどれだけ悲惨な感じの物語でも、主人公たちは実に楽しそうだなと気付いた。自分の立ち位置の悲惨さを客観的に楽しんでいる登場人物を作家として客観的に作品として定着させていくという構造が、読者のこちらにとって客観的に見えるところがこの作家の実に良い点なのだろう)
あらためて才能の大きさに舌を巻きまくった。
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