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タモリ倶楽部の録画を見ようとして、ふと妻が録画して残していたらしきNHKスペシャル明治神宮 不思議の森というのに目がいった。
で、見た。
おもしろかった。
知っているところもたくさんある。
作られたのは大正年間。当時は単なる荒地で、そこに植林して森にしたとか、そういったことだ。あと、立ち入り禁止になっている(参道以外は)とか。
が、大正時代の日本らしい壮大な計画があったことはまったく知らなかった。
森の設計をしたのは本多静六を中心としたプロジェクトチームで、何を考えたかというと、放置することで150年後に原生林を創り出すというものだ。
最初は針葉樹(荒地に強い松とか)を中心に、常緑広葉樹を混ぜておく。50年後には常緑広葉樹が増え、寿命が短い針葉樹が勢いを減らす。150年後には針葉樹はほぼ消えて常緑広葉樹の森になる。そのためにはどういう間隔でどう種類を植えるか計画する。
そこに大隈重信が待ったをかける。
「厳かで美しい。なんといっても杉に限る」
それに対して本多静六が戦いを挑む。
「杉では100年、200年と残る森は生まれませんが、それで明治の大帝に対して閣下の面目がお立ちになるのですか? よろしいのですか? 後世の人に、あの干からびたすかすかの荒地は大隈公の御指示だそうだと言われますよ」(いんちきだ)
多分、大隈重信は言ってみただけなのだろう。杉をあきらめた。かくして都心のど真ん中にスギ花粉症の巣窟が生まれることは阻止されたのだった。
日本全国から集めた10万本の木(巨木あり、並の木あり)と、義援団が入り、植樹をしまくる。すべて本多博士たちの設計図通りに配置される。この植林団を見て、(みな嬉々として力仕事をしているわけだが)ピラミッド建設ってこうだったのだなと思った。
さて、100年の間にどうなったか調査が入る。前回は1970年代だったらしい。
蜘蛛、魚類、菌類、哺乳類、昆虫などの学者が入って調べまくると出るわ出るわ希少種、準希少種、絶滅危惧種がどばどば出てくる。都内ではほぼ絶滅したはずのヤマトタンポポが群生している。キノコもたくさん、こんなのがいるなんてと驚きの声があがりまくる。
タヌキがポンポコしている。
手入れをしないことを信条としているが、唯一人手をかけているものがあって、それは秋に掃いて集めた落ち葉は森へ戻すことで、ここだけが唯一人手で自然に介入するところらしい。当然のように腐葉土となり、森の成長を促す。
樹木を一本一本調査する(3年かかるらしい)といろいろわかってきた。まず巨木が着実に減っている。が、それは針葉樹の類で、そのかわりに常緑広葉樹が日を受けることができるようになって増えている。成長もしている。
まさに計画通りだ。というか、計画の150年後の状態がほぼ100年にしてできている。
最初のころに観察された鳥がいなくなって(キジとか)、代わりに森に棲む鳥が見られるようになった。
その象徴として、オオタカが写し出される。巨大な青大将がヒナを狙って近づいたり、いろいろな映像が入る。
オオタカって美しい。
かくして、世界でも類を見ない、完全に計画された人工の、原始林がそこにはあるのであった。
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