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妻が正月用にツタヤでレンタルした近藤ようこのルームメイツを読みふける。
抜群だ。
近藤ようこの印象は、旧ガロの身毒丸や、劇画マスカット(かなぁ? アリス亡き後にあのへんの劇画家の逃げ場みたいになった雑誌)に載っていた、ちょっとおっかない系のやつが強いので、頭がおかしいルームメイトが夜な夜なナイフを片手に放浪するようなやつかと思ったら、まったく違った。
中学卒業してすぐに芸者になって、あっというまにどこかの道楽人にひかれた女性(今は小唄の師匠)と、学校教師の職を得たので戦死した父の代わりに家庭を支え気づけば60目前という女性が、同窓会で久々に出会う。
1991年の作品なので60なら1931年生まれ、まあ数はあう(最初、比較的新しい作品だと思って、舞台の時代をずらしたのかと思った)。
二人は孤独な老後を支えあうことで意気投合してマンションを購入して共同生活を始める。
しかし、かっては粋で美しい(60近くになっても美しい設定)お妾さんとして生きてきた女性と、気づけば独身60間近の固い高校(忘れた。中学、小学かも)教師の女性で、生活スタイルがマッチするわけがない。早速険悪な様相を帯びてくると、そこに同窓会で一緒になった、もう1人の友人が荷物片手に飛び込んでくる。家出してきたのだ。
平々凡々な専業主婦として生活してきただけに、同窓会の席上ではお妾暮らしと独身教師とは決定的に決裂したはずだったのだが、なぜか、急に定年退職して家に居続ける夫との生活に耐えきれなくなって出てきたのだった。
あきれかえる二人。
しかし、一家の主婦として夫と子供たちをあしらってきただけに調停能力抜群な彼女がいるほうが、安定した3人暮らし(ということになってしまった)が送れると気づいた二人は受け入れることにする。
かくして、60間近の女性3人の共同生活が始まる。
一方、家出主婦に取り残されてゴミ屋敷化する夫の惨状に見かねた長男とその賢妻にして良母な妻、自由な結婚生活を標榜する長女とその研究者の夫、さらには、かって教師と結婚寸前までいった元教師とその脱サラして喫茶店を営む子供と、その後妻、役所で固いと評判の栄養士(料理教室では小唄の師匠の先生で、小唄の弟子になる)とその両親(長女1人の田舎家庭なので婿養子が欲しい)と彼女と相思相愛になる農家の長男とその両親(嫁は欲しいが農家の娘以外に興味なし)、さまざまな家族の様相と生活のあり方が入り乱れて小さな事件が次々起きる。
死期もみえるし、病気は怖い。お金は先立つもので、子供はかわいい。
それでも地球は廻っている。
これは傑作だ。
ルームメイツ コミック 全4巻完結セット (ビッグコミックス)(近藤 ようこ)
1991年という時代を背景にしているから、会社員というのは非常に安定していて、その主婦というのもこれまた安定した存在(しかし、心情的には実に危うい)という点は、現在とはずいぶん異なるように感じるが、人の心のありようは、それほど変わってはいないようにも見える(LGBTという生き方は出てこないが、そこまで膨らませる必要もなければ、そういう時代でもなかったということだろう)。
つまり、常緑の傑作といえた。
自由に生きたいものだな。
追記:そういえば、以前読んだ三文未来の家庭訪問も家族の在り方というものについてのマンガだったな。
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