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ウルフシルマーが出だしからなんかいつもと違う。
妙に区切って金管が始まり、異様にテンポが遅い。この曲の序曲(前奏曲かも)は、ローエングリン3幕やアラベッラ3幕の序曲と同じタイプの音楽で、オクタビアンが激しく元帥夫人とからみあう音楽のはずなのだが、まったくそういうふうには聴こえない。
逆にとにかく耽美的で、たとえばオックスのワルツが実に優雅で、あれこんなに良い曲だったか、と思ったり。
特に抜群だったのは、3幕、3重唱が終わり2重唱があり、親父がやってきて、若い者はこんなものですなぁと言って、次の2重唱が始まる、この隙間のバイオリンがとてつもなく美しくて、歌にばかり気を取られることが多かったのが、オーケストラもこんなにまで美しかったのかと思わず陶酔する。3重唱の始まる場面はいよいよ3重唱だという期待もあるし、とても緊張するところなのだが、ここも美しかった。シルマーの指揮が素晴らしい。
3幕になって元帥夫人が登場するところでは、この演出の最も美しい光景なのだが、それは元帥夫人の立ち居振る舞いとともに、黒いアシメトリクな服のせいでもあり、実に良い意味でフェミナンな服で、森英恵っぽい(本当に森英恵かもしれない、新国立劇場だし)。メルベートは最初声が小さいなぁとか思っていたが、ここでは立派だった。
2幕も良いのだが、ふと気づくとオクタビアンの声が高く、ゾフィーの声が低い(というかしっかりとした声)ので、相当に倒錯的であった。
これも実に良いプロダクションで、とにかく当たりが多い。
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