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どうして買ったのか記憶にないが、Kindle積読シリーズ解消のため読んだ。なんか1か月近くかかった。
一昔前の本なので最後の記述は2015年で、主たる内容は2011年だから、また状況は変わっているかも知れない。
読んでいていろいろ驚く(知らなくて、あるいはこちらが知っているつもりのこととかけ離れていて)ことが多い。
アメリカ合衆国の話なのだが、基本的に
・高校は大学受験のための準備で勉強はカリキュラムでがちがち(底辺校に入ると荒廃していて勉強どころではない)
・大学の先生は教えることには興味がないので暗記主体。
・受験のためには暗記重要。と同時に良い大学に入るためには習い事重要(習い事と勉強で子供を締め上げる両親はタイガーマザーとかヘリコプターペアレントと呼ばれて、風潮としてはそうあるべきだとされているが、筆者はそれではだめだと考えている)
・小学校、中学校もカリキュラムでがちがちなので暗記主体
これでは創造力なんてつくはずありませんね、やれやれ、というのが基調となっていて、それはどの国の日本だ(ゆとり教育前かも知れないが)? 状態で読むことになる。
そうはいっても、それではまずいと考える人はいるし、子供もいる。
理系から5人、文系から3人の20代(19歳くらいもいたかも)のイノベーターの卵を紹介して、両親、生育環境、小中高、大学、教師、インターンのリーダーといった連中のインタビューの記録が主な内容だ。
翻訳の問題ではなく、あからさまに、理系と文系という区別をしている。(STEM対リベラルアーツではあるが、内容、観点、社会的意義のすべてにおいて、日本での理系、文系と相似だ)。靴デザイナーの卵が理系に組み込まれていること、文系のイノベーターはNGOがゴールっぽいところが日本とは異なる点ではある。
読んでいて、はて、なぜおれはこの本を読んでいるのか? という自問自答に悩まされる。そのため、途中で何度も読むのやめようと考えるのだが、なにか魅了されるものがあるのだ。
で、それは筆者のあとがきで理解できた。
とにかくあとがきの危機意識、目的意識、(アメリカ3億人の中のごくごく少数のイノベーターに対する)揺るぎない信頼と、(アメリカ3億人の中の数1000人くらいはいるはずのイノベーターを目指す若者に対して)真摯に呼びかけたいことが、筆者にはあるからだ。
どう読もうが本体は親や教師や役人に向けて書いているとしか思えぬのだが、あとがきでは、実際の読者として想定しているのは、イノベーターたらんとして本書を手にした(つまり、イノベーション教育を受けることができていない不遇な)若者だということが、明示される。
その構造が見えたとたんに、それまでのうんざりが雲霧消散して、深い感動が訪れた。
恐るべしアメリカ。
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