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フアンルルフォの燃える平原読了。傑作だ。
20世紀中ごろのメキシコの作家なようだが、書かれているのは砂漠、照り付ける太陽、犬の遠吠え、山賊と政府軍、父子の確執、殺しと復讐だ。
ほとんどの話が主役に対して語り手が何かを語り始める。最初は生活の愚痴のようなのだが、だんだんと過酷な生活と暴力と殺人と復讐の話に転化していく。そして唐突に終わる。
最後のアナクレト・モローネスだけ、聖職者を名乗る女たらしと、その使徒の女たらしを巡る艶笑奇譚(とはいってもやはり殺しと照り付ける太陽が容赦なく存在する)で、えらくおもしろいのだが、物語としてはまったくおもしろくないルビーナという山地へ何か良いことをしに家族で移住してから逃げ出した男の独り語りがえらく印象的だ。
題名が圧倒的にかっこいい燃える平原は、反乱軍と政府軍の追跡劇。
まさに砂漠そのもののような殺伐しきった世界を殺伐と語っているので、同じように冷酷な風土での過酷な生活を描いていても、ヴェルガのヴェリズモが持つ湿地帯のなんか血の流れみたいな生々しさはほとんどなく、逆にそこがある種の爽快さがあるようだ(内容的には実に不快なことばかりではあるが)。
しかし、それにしてもメキシコとはまったくわからん国だ。
トロツキーの亡命を受け入れる社会主義国のようでありながら、軍閥割拠のファシズム国家のようであり、資本主義国なのかどうかもわからない。というか、そもそも工業が成立しているんだろうか?(20世紀半ばまでの話)
映画としてはブニュエルの作品を見ると、これまたさっぱりわからないわけだが、ナゼレに描かれていた砂漠と宗教と無関心と犯罪の世界とルルフォの作品世界は相当近く感じるが、これはレアリスムなんだろうか?
メキシコの革命というのは少なくとも共産主義革命ではないし、日本の維新とか中国の軍閥反乱みたいなものだったんだろうか? 少なくとも、メキシコ万歳に描かれていた革命は農民反乱みたいなものだったが。
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