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松濤美術館で真珠展。5月30日から7月26日までの予定が、延期されて今やっているので見てきた。
想像を遥かに超えるおもしろさだった。
とにかく知らないことが山ほどあった。
たとえば鳩は聖霊のモチーフ。
モーニングジュエリーは喪の期間に付ける。朝かと思ったら呻くだった。
というわけで、モーニングジュエリーと書いてあるので、朝(夜会用の夜会服があるのだから)にもそういうものがあると思って見ると、柳と墓標の上に鳩がいる。柳? 墓標と考えてしまうわけだが、モーニングはmorningではなくmourningで喪に服している間の宝飾品と初めて知った。というかモーニングジュエリーという言葉自体が初耳だった。鳩は聖霊(父と子とに続く三位一体の聖霊)なのだった。
子供がmorningとmourningは同じ発音なので、なんかのビデオで母親が悲しんでいると、子供がやってきて、ママ何しているの? と尋ねるやつがあると言い出す。母親がやっとのことでmourningと言うと、子供は(挨拶されたと思って)無邪気にgood morning!と返す、とかを見たと教えてくれる。
英語でも全然意味が異なる同音異義語があるのだなぁ。
エナメルはガラス吹き付けなので遥か昔から存在する(20世紀石油化学だと思ってた。ということはサンドリヨンのガラスの靴ってエナメルのことかな)。
エリザベス一世の肖像画の宝石を真似て19世紀の宝飾屋が作ったレプリカ(真珠が随分と小さいが、そもそもの画のものが大き過ぎるのだろう)はおもしろい。
大村藩では阿古屋貝の貝柱は藩主の特権食材。真珠が入っていたらお食い(忘れた)として珍重する(おれの推測では、最初はガリッとして料理人を手討ちしていたのを意味をもたせてやめさせたのではないか)
という事例はあるが、文献上、真珠を宝飾品として言及したものは見つからないそうだ。
ハーフパールは加工技術によって可能となり、それまでは貝殻に生成されたものだった(呼称は忘れた)。逆にミキモトは最初養殖に失敗したが貝殻にハーフができた(そしてそれで十分に商売になった)ので邁進策を取った。
イタリア19世紀に古代の意匠を復活させて大儲け。ガリバルディの統一と関連しそう。
17世紀まではフランスが本場だったが産業革命でイギリスに金持ちが増えて18世紀以降はイギリス一強(19世紀にイタリアが勃興するまでは、イタリア人名のイギリスブランドもある)。
ティアラの革ケースがかっこいい。
シードパールの19世紀ものが、遠目には象牙みたいで美しかった。
真珠は有機物なので古代のはあまり残っていないがメソポタミア文明時点から珍重されていた(淡水真珠が見つかっている)。
などなど盛り沢山で圧倒された。
追記: ミキモトの作品で「後に矢車となる」というものがあったのだが、そのおそらく完成形らしき矢車が置いてなくてがっかりした。どんなものなんだろう?
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