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日々の破片

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2021-03-13

_ アリージャンス

東京国際フォーラムのCでアリージャンス。

太平洋戦争下での合衆国の日系人強制収容を描いたミュージカル。

2000年あたり、過去の記憶を振り払おうとしている東洋人の爺さん(軍服を着ているが、戦友たちを思い出すために真珠湾攻撃の日にはこれを着るのだと言う)の元に中年の女性が訪れる。お姉さんが亡くなったからこれを渡すように頼まれたと封筒を差し出す。爺さんは拒否する。もう30年以上も会っていないし思い出したくもない。

そこから過去の回想となり物語が始まる。

弁護士にさせたい父親(一代で農園を築き父親を日本から呼び寄せた成功者)に反発する弟と、弟の出産時に死んだ母親の代わりに一家の主婦役を務めている姉の4人暮らしで、近所の白人から野菜の注文を受けたり(単なるエピソードかと思うと後で再登場する)なかなかの羽振りの良さだ。

いきなり(実際奇襲攻撃だったわけだし)太平洋戦争が開戦する。

一体どうなるんだろうと家族で話す。

息を潜めて嵐が過ぎ去るのを待つのだと主張する父親。

合衆国への忠誠を示して日本と戦うべきだと主張する弟が対立する。

近所の人が、第一次世界大戦のときはドイツ人商店が焼き討ちされたからお前らも気を付けたほうが良いぞと教えてくれる。

そこにルーズベルトによる日系人の強制収容命令が下されて、全員ネバダの砂嵐が吹きすさぶ強制収容所に家畜運搬列車で移動させられる。

少なくとも20万ドルの価値があると言っている農園は、2000ドルで売却させられる。

強制収容所ではいきなり全裸検査をさせられそうになり、抗議した結果、軍の看護婦が気を回して女性だけは小屋へ案内されることになる。

共同便所には、個室の区切りがない。

空手の稽古をしていると兵隊に銃を突きつけられて、ここでは東洋のことはすべて禁止だ、と告げられる。

医薬品は軍関係者のみに行き渡り、日系人には包帯と絆創膏のみを与えても良いことになっている。水にも不足している。

爺さんの咳が止まらないため、弟が病院を訪れる。ルールによって薬を与えることはできない、と看護婦に断られる。

弟が抗議し、看護婦が抵抗する。日本人は従順と聞かされていたけどこの男はちょっと違うようだわ、ルールを彼女が破ることができないのは理解できる、とお互いに歌っているうちに心が通い合う。

その後も弟が始めた改善要求の中の遺体袋の提供などにも看護婦は協力する。なぜ遺体袋が必要なのか? マットレスが不潔過ぎるが、遺体袋に藁を詰めれば清潔でクッション性があるから代わりになる。あなたって頭良いのね。この二人の間では人種の差を超えた交流が生まれて美しい歌がいくつも入る。

ほとんどの白人が日系人を獣扱いして不服従に対しては平然と殴り殺す(直前に見かねた別の軍人が看護婦に助けを求めたため、物語に重要なインパクトを与える)。

日系人代表(彼は収容されていない)の必死のロビー活動で、合衆国への忠誠を誓ったものによる数百人単位の部隊の結成が認められる。数百人の部隊が合衆国のために戦死すれば、さすがにインパクトがあるため、日系人に対する差別意識が軽減されるだろうとの判断だ。

かくして、合衆国への忠誠と、天皇の否定の2項目を持つ意識調査が行われる。

父親は両方に対してNoを書く。さすがに愚弄するにもほどがある。

かくして逮捕されて刑務所へ送られる。

弟は両方に対してYesを書く。弟は、忠誠を尽くすことで人種の差を超えて同じ国民として認識されるだろうと考えている。それはそれで正しい判断だ。

一方、姉と良い仲になったフランキー(日本語学校を経営していた両親は開戦と同時に(根拠なく)逮捕されて刑務所に送られている)は、不服従運動を開始する。答える必要はないから答えない。当然の権利すら与えられていない国民に忠誠を要求する国家というのはあり得ないだろうという、正しい判断だ。

レジストの歌は、合唱で「レジスト!」と叫ぶのだが、最初、何を言っているかわからなくてレイシスト!と言っているのかと思った。まあ、その通りなのだが、さすがにそれでは歌にならないし不思議だなと思ったら、服従とか抵抗とかのセリフがあって、ああレジストと言っているのかとわかった。

かくして、正しい判断同士のぶつかり合いとなる。

姉は弟が出征することに反対だ。それ以外は特に考えはなく、わたしは親が揺するブランコの縄の高さに縛られているが、弟は遥か高みへ行こうとしているわ、という美しい歌が歌われる。

(ミュージカルの文脈を実にうまく押さえた名曲だ)

姉は志願しようとする弟を止めようとする。

それまで頭がとぼけているように見えた爺さんが良いことを言う。

「父の言うように、志願せずに待つべきですよね、お祖父さん?」と姉に聞かれて

「男の子は父親に従うべきだ。」

沈黙。弟も動揺する。

が、続けて

「しかし男は自分で選択して前へ進むべきだ。お前の年齢におれは戦争へ行った。お前の父親はお前の年齢で海を渡った。お前はどうする?」

かくして弟はすっかり仲良くなった看護婦に家族のことを頼み、日系人部隊へ志願しイタリア戦線へ送られる(どうでも良いが、舞台美術がイタリアではなくボルネオみたいで違和感があった)。

ドイツ軍に包囲された100人を救出するために400人の日系人部隊がほぼ全滅する。弟は負傷するが命は助かり、戦場の英雄としてタイムの表紙を飾る。

刑務所で担当者が父親にタイムを見せる。お前の息子は凄いやつだ。息子のおかげでお前は釈放されるのだから感謝するんだな。父親はタイムを貰う。

一方収容所では、姉は決断を迫られ、フランキーを選択する。

フランキーの不服従運動は徹底的に弾圧されて、フランキーは半殺しにされる。見かねた兵士がフランキーを病院へ運び込む。後を追ってきた(収容所長にあたるのかな?)軍人がさらに殴る蹴るを繰り返す。最後の力を振り絞って反撃しようとするフランキーに対して、これを待ってたと拳銃を取り出す軍人、止めようとする看護婦で悲劇が起きる。

広島があって(合衆国の物語だけあって長崎は出てこないのか、時間的に意味がないから省略しているのかはわからない)戦争は終結する。

収容されていた日系人は米国政府の好意により(と皮肉たっぷり)、バスのチケットと1人につき25ドルを支給されて収容所から解放される。

日系人ロビイストから事務局へ誘われた弟は、とりあえず家族の元へ行くことを告げてサンフランシスコへ向かう。

しかしフランキーと姉と父親が住む家で、自分の居場所がなくなったことに気付きワシントンに戻る。

そして現在へ戻る。

最後まで父親とは和解しなかったし、する気もなかった弟は、渡された封筒を開ける。

あなたのお父さんの宝物だそうですよ。

マイ・ヒーローと父親が書いた文字がある、タイムだった。

音楽はすばらしい。ただし、日本風のメロディを作ろうとしているのだろうが、5音音階の使い方が日本ではなく中国になってしまうのはしょうがないのかなぁ(プッチーニのほうが調査に時間をかけたからか遥かにうまい)。

出てくる人物のほとんどが独自のそれなりに正しい倫理観に従ってバトルを繰り広げるので見ていて居心地が非常に悪い(が、それこそが作者の狙いなのだろう。もちろん諸悪の根源はルーズベルトの差別主義と、大日本帝国の無軌道な拡張主義にある)中にあって、看護婦さんだけは本質的な人道主義で動くのでえらく役得な印象を受けた。

途中、愚公山を移すが引用されるが、なぜか列子ではなく孔子の言葉とされていてちょっとそれはひどい(儒教的には聖人でもない愚公が山を動かすわけがない)。

Allegiance / O.B.C.R.(Allegiance)

このCDのジャケットは看護婦さんと爺さんなのか? 奇妙だ。と思ったら子供に、レアサロンガはブロードウェイのアジア人トップだから当然ケイト(姉)だと諭される。爺さんは実際に収容所で過ごした人だそうだ。


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