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プライムビデオでミリオンダラーベイビー。クリントイーストウッドの作品はほぼ観ているのだが、なぜかこれは見逃していた。
過去は短いフラッシュバックだけで済ませて現在を描くいつもの手法。したがって、テンポが速い。しかし現在の中でも特に重要なシーンは退屈寸前までのしつこさで映す。
主人公のフランキー(止血屋兼トレーナー)は過去に何かの因縁があって娘から拒絶されている。
片方のマギーは30を超えたウェイトレスでミシシッピーの極貧の生まれとしか紹介されず過去は描かれない。しかし働いているカフェのお客の食べ残しをアルミホイルでくるむ描写で貧乏がわかる。後でフランキーが自宅を訪れた時、出納メモを見て家族へ仕送りしていることを知る。
なぜかマギーはフランキーをトレーナーとして選ぶがフランキーは拒絶する。半年分のジム費を払ったので追い出すこともできず(ジムには金が無いのだ)放置している。
モーガンフリーマン(スクラップという名前だが、失明して引退した元ボクサーの名前としてもなんかひどすぎるのではないかなぁ)が見かねて教える。フランキーのスピードボールを貸し与えたスクラップの作戦が当たり、最終的にフランキーはトレーナーを引き受ける。(フランキーがスピードボールを奪い返すあたりで印象的な会話があって、それでフランキーは引き返してボールを貸すのだが、どんな会話だったか忘れた)
が、最後まで面倒を見る気はないので別のマネージャを紹介する。が、このマネージャが今後のマッチングを有利にするために一方的な試合を組んだことに激怒して自分が面倒を見ることにする。このあたりの流れもスピーディーだ。
すぐに強すぎるマギーはマッチを組めなくなり、海外へ行く。緑のガウンにアイルランド語というかゲール語の名前を付けているので、観客は大喜びする。なぜかわからないがフランキーはゲール語を学んでイェーツを読んでいるのだ。ヨーロッパを連戦して実力もつき金も稼ぐ。このあたりの流れもスピーディーだ。というか、このスピード感は明日のジョーにも通じるものがある。
結構稼いだことでマギーは母親のために家を買い、フランキーにミシシッピーへ連れて行ってもらう。
ここからはむしろテンポを落として家族関係を示す。フランキーは傍観者として常にいるのだが、立ち入らない。ちょっとニコラスレイの撮り方みたいだ。
マギーの家族は貧すれば鈍するの代表として描かれている。肥満した母親、刑務所をいったりきたりの弟、離婚した子供持ちの妹。母親の口っぷりからは、ボクサーよりも離婚した子持ちでも生活保護費を地道に稼ぐ妹のほうが誇らしいらしい。マギーが入院したときは見舞いに行くと言って4日放置(その間ディズニーランドへ行く)。ディズニーランドで遊びまくってきたということは服とフランキーの嫌味だけで示す。
ラスベガスでタイトルマッチが行われる。行きは飛行機、帰りは車が良いとマギーが言う。
スクラップはついていかずにジムを保守するという。ここで、残念な左フックしか能力がないボクサーが、ハートしかないデンジャーという少しおかしなボクサー見習いをリンチにかける。スクラップは人生最後の試合をKO勝ちする。デンジャーはいつの間にか姿をくらましているのだが、数日後に戻ってくる。スクラップとデンジャーの物語はこれからも続くのだろう。
ラスベガスは砂漠に作られた人工都市ということを思い出させる、医者についてのフランキーの文句。
最後、謎だったゲール語の名前をフランキーはマギーに教える。それは血のつながりを示す言葉だった。ここで初めてフランキーは去ってしまった娘をマギーに投影していたことを言葉で説明したことになる。
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