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素数たちの孤独という小説はあまりに主人公たちの考えや行動が痛々しくて読むに耐えないのだが、物語そのものは興味深いので結局ちまちま全部読んでしまった。それにしてもあまりにも痛切(というよりは、現代日本語の「イタイ」に極めて近い)。
書いたやつが物理学者だか数学者で、男側の主人公はまさに数学者(になる)のちょっと頭が周囲から見ればぶっ飛んでいて(強烈な自傷癖がある)、女側は高圧的な父親に委縮、後に反抗なあまり自ら災厄を招きまくって現在拒食症真っ盛りという二人の相当外れた主人公が8歳から30過ぎまでを、特定時点の断片で描く奇妙なイタリアで大ベストセラー(200万部売ったそうだが、人口から考えるととてつもない)となった恋愛小説だが、イタリア人ってこういうイタイのが好きなのだろうか。
イタリアで考えてみればモラヴィアもそうだし、ベルトルッチは殺しから最後までそうだった(というかブッダですらそうだった)。というか、そもそもこの本に手を出したきっかけはベルトルッチの孤独な天使たちが原因だが、映画と小説では言葉の動きが異なるので相当小説だとつらいものがある。
高校時代に二人は出会い、男の部屋のベッドの上でごろごろするくらいの関係となるのだが、とにかく男も女もほぼ性欲が無い欠陥人間なので(なのでごろごろしているからすることをしたのかと思ったら全然違って、本当にごろごろ寝っ転がっているだけだった)、恋愛小説といっても実に形而上での恋愛となり、最後に、ああやっぱりという終わり方となって、肩透かしというか、納得というかとなる。一点解決されない問題があるのだが(それが男側の大きな傷で、女側はそれをどうにかしたい)解決させないのは良い作法なのだろう(というか、作者自身がどうすればよいのか計算できなくなったと見た)。
素数たちの孤独 (ハヤカワepi文庫)(パオロ ジョルダーノ)
で、書影のISBNを取りに行くのでアマゾンに分け入ったついでに作者をクリックしたら、この作家はコロナの始まりのころに一時話題になった(確か出版前に一時的に公開していたのではなかったか? 読んだ記憶がある)『コロナの時代の僕ら』の作者だった。そう言われてみれば一貫性があるように思う。
とはいえジョルダーノといえば、おれにはフェドーラやアンドレア・シェニエが最初に来るのだ。
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