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日々の破片

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2009-01-14

_ アップルアップル

おととい、ジャスコに行って、電器売り場をながめていたわけだ。

で、iPodの新しいの欲しいなぁとか見ていて。

今持っている2代目シャッフルのオレンジもいいけど、ひさびさに(最初に買ったのは15G iPodだったわけで)全音楽が入るのがいいなぁと、

Apple iPod nano 16GB パープル(-)

これかなとか。

でも、値段が互角なのか。じゃ、こっちもいいなとか。

Apple iPod classic 120GB シルバー MB562J/A(-)

でも、あの気持ち悪いピンクや青とかも捨てがたい(もちろん、一番気持ち悪い紫最高)とか。

特にあの黄緑の気持ち悪さったらないね。欲しい。

Apple iPod nano 16GB グリーン(-)

で、iPod mini(だっけな)で、この気持ち悪い色がiPodだと刷り込まれたおれは、気持ち悪いのに欲しいなぁとか思いながら見ていて、そして裏へ回ったらソニーが置いてあるのがPOPでわかって、そこで、ソニーならまともな色のを売ってるよな、と思いながら見たら、違った。

SONY ウォークマン Eシリーズ 2GB オーシャンブルー&フォレストグリーン NW-E025F LG(-)

もっと気持ち悪かった。

そして、ソニーは嫌いだったのだが、嫌いというのは、それを認めているからこその感情であって、今では単に無視すれば良いだけのものになり下がったのだな、と思った。なんで、iPodみたいなメタリックで気持ち悪い腰が落ち着かない色にするんだ? つまり、「iPodみたい」な色の製品を作っている会社という眼鏡がかかったということだ。

というところで、通勤時間に読んでいた『アップルはいかにして顧客の心をつかんだか』をちょうど今日(というか昨日)読了した。

嘉平さんにもらったんだけどね。

企業戦略としてのデザイン アップルはいかにして顧客の心をつかんだか(Robert Brunner)

トラウトの本とかがそうだけど、おれは、マーケティングの本は割と好きだ。現実にマーケティングカンパニーは存在し、それが成果をあげていたりするのだから、無視するわけにはいかないし、おれにはさっぱり理解できない理由で人が大枚払うのは不思議だからその理由を知りたいというのがあるからだ。なんでソニーの製品を買うやつがいるんだ? (AIBOは買ったけどな)とかだ。

しかし、それがデザインであれば、おれも理由はわかる。

この本の提言はひとつ。

CEOは企業の方針をデザインスクールを卒業した人間に委ねよ。

例)アップル、サムスン、BMW

さらに、エクスペリエンスのサプライチェーンを作れ

良いデザイン→所有欲の満足→(ここでトラブルが起きる)→デザインによって導かれる企業精神によるサービス→さらなる満足

そりゃ、トラブルは起きる(起きなければそれはさらにOK)。そこで、アップルショップのジーニャス(の例は出てこないが、おれは行ったから言いたいことはわかる)に文句をたれる。待ち時間にもそれほど退屈しないし、並行に並ばされて横入りおばさんとかねえさんとか出てこないし、まあフレンドリーではあるし、店はクールだ。

逆の例が具体名でがんがん出てくる。

たとえば、レクサスとかいう名前の自動車販売会社らしきもの。

あなたが認定証付きの環境保護論者で、エコの流れに乗ってハイブリッド車を買うことにしたとする。(略)この車は、技術的には夢の車のように見える。だから、最初はいい買い物をしたという感じがする。しかし納車されてからすぐに(略)このように車のユーザー・インターフェイスのエクスペリエンスは最低で、燃費も宣伝より悪いので、機械工学的にはすばらしく、加速も目が覚めるほどだが、(略)この車の満足度は低くなってしまった。(略)ここでエクスペリエンスはただ悪いだけでなく、醜悪なものに変わる。(略)あなたはレクサスの自動車を二度と買わないと誓うだろう。(略)自動車株式会社は、もうマイナスの形でしかあなたの関心を引かない。

このように、すばらしく醜悪なエクスペリエンスを提供して、死んでも買わないと誓わされる例がたくさん(つまり、おれにとってのソニーだ。最初に買ったウォークマンのエクスペリエンスが負のサプライチェーンを作ってくれたということだな)。

もちろん、逆もある。サムスンだ。

おれは、不思議だったのだよ。三星電機だよな。いつの間にか、サムスンはブランドになっていたってことにだ。でも、それはこの本に書いてある。デザイン主導企業に本気で変身したからだ。

別の例。ポラロイド。エクスペリエンスは撮った写真がその場で見られて(相手にあげられて)ちょーうれしー。でも、この本の執筆時点では、本来、そのエクスペリエンスを維持するのに必要なシフト、つまりデジタル化をしなかったツケについて書かれていて、そしてこないだ、ポラロイドは消えていった。

というように、エクスペリエンスからデザイン、デザインからエクスペリエンスについて、やまほど事例を挙げて、最初に書いたメッセージ、つまりデザインスクール出身のデザイナーの地位の向上を訴える。敵は、Excel脳のMBA達だ。コストと物のサプライチェーンの管理、それじゃだめだね。Excelで求められるものはライバルも実行できる。つまりラットレースになるだけだ。デルの現状を見てみろよ。実際、今じゃマイケルは反省してデザイン路線へシフトチェンジしてるんだぜ。書いた人はデザイナー(元アップルの工業デザイン担当取締役。もちろん今はデルも顧客だ)、裏打ちはアップル、BMW、サムスンその他のデザインカンパニー、反例としてデルのような高度な生産管理企業や、サポート部門に対するリストラをしたためエクスペリエンスの質低下を招いた、したがって顧客離れを起こし、株価が低迷したスターバックス、ホームデポ(CEOを挿げ替えて立ち直りつつある)などなどということだ。

繰り返しは多く、エクスペリエンスのサプライチェーンは呪文のように3ページおきに繰り返される。

しかし、おもしろい。具体的で、エクスペリエンスがあるからだ。

なぜ、アップルが成功しているのか、あの気持ちが悪いiPodの色でOKなのか、なぜ人はBMWに金を払ってしまうのか(おれは、ホンダが好きだけどな)、iPhone(この本には書いていないが、iTouchでエクスペリエンスのテストをしたわけだな、とつくづく気づく)とか、そういったマーケティングマジックに見えることについての、デザイン側からの手前みそなしかし多分に正しい点がありそうな視点で書かれた、おもしろい本だった。

ところで、だれか、同じ方法論を使って、提言

・CEOは企業の方針をプログラマーに委ねよ。

でビジネス書を書いてくれないかな?

ほかの成功要因はいっさい無視したほうが、ターゲットを絞れてビジネス書としてはむしろ良いわけだから。


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