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byflowに、畑中純の絵が見えたので、興味を持ったのがまず最初。コミックばくという売れない雑誌が売れない原因のひとつとされた畑中純の画を表紙にするとはセンスが良い。
で、アマゾンの評がむちゃくちゃにひどい。
学術書の星1つならともかく、小説に対してのアマゾン低評価というのは、単に良く売れる本=読書をしたことのない人が話題性から手に取って、結局読解できずに文句を垂れるという公式がありそうなので、どれどれどのくらい難しい本なのか読んでみようという気になった。というか、難しいはずはあり得ないから、それは興味も湧くというものだ。
で、最初はだらだらしているし、出てくる人物に誰一人として興味も共感も湧かずに半ばうんざりしながら読んでいると、突然殺人が起こり、老人の刑事が出てきて喋りはじめる。会話で物語が進み始めるとテンポは良くなるのだが、その反面、似たような人種(同じ職業についているというか、つまりは警察官なわけだが)のセリフのキャッチボールなのでどの「」が誰のか? とわかりにくくなったなぁ、と思う間もなく、主役級の刑事が昔喋っていた方言を思い出したとか弁解しながら方言をひとりで喋り始めるので、誰がどのセリフを言っているのか明確になった。くだらねー仕様だなぁと思いながらも、物語が動き出すのでうんざりはしなくって本腰を入れて読み始めた。
が、やたらめったらと、女だから、女ですもの、それが女の生きる道とか、妙なジェンダー感がやたらと出てきて鼻につくつく、何このステロタイプというかショーヴィニズムというか思わずカバーの著者紹介をちゃんと読んだら1950年代生まれとか書いてあるから、ああ、そういう価値観なのか、と我慢することにする(というか、いつの間にか、すっかりポリティカルコレクトネスにおれは毒されてしまっているようで、こういうのに嫌悪感を覚えるようになってしまった)。また、考え方が非常に不愉快な田舎者がえんえんとつまらない考えを開陳するので、ますます不快になってくるのだが、不快の頂点の段階で殺されるので一安心。というか、出てくる連中がほぼ全員セックスにしか興味がないみたいなのが読んでいてすごい違和感だ(で、むしろ異常な考え方なのだが、妙に達観している若者の思考に同調するしかなくなるわけで、それも読者の方向性を揃えるための技巧なのかも知れないなぁとか考える)。
で、怪しげな人(つまりは、唯一まともに見えてしまう若者)が実に怪しい過去をちらみさせて、でもそいつは犯人のはずはないよなぁと読んでいると、突然、妙な集落を探検したりして、おもしろくなった。なるほど、いろいろな事物の組み合わせで物語を作る人なのかと感心する。そういえば食い物の描写や室内の描写なども凝っているな(が、人物の造形は女だから女ですもの、やっぱり私は女だは、と不快な紋切型で、個々の事物に対する描き様に対して人間にはそれほど興味はないようだ)。
と、話は進んで、おおなるほど、こういうことだったのか、と帯にも書いてある被害者の間のリレーションシップ構造の巧妙さに感心し、電車でぽつぽつ読むつもりが一気読みの態勢となった。
で、確かにいくつか事件と関係ないため回収しない設定(だが、それを人物の陰影のための設定と考えればありだよなぁとは思うので、どうも事物に対する描写に対して人物の描写が妙に紋切型なのを補うために導入しているようでもある)があったりするので、快刀乱麻というわけではなく、そこがアマゾン低評価の理由だなとは気付くが、しかしそれは欠点ではなく、むしろ余韻というか妙な味が舌に残るというほうで、読書体験としては良いことなんだろう。
というわけで、十分におもしろかった。が、やはりこのてのジャンルは好みじゃないなぁ。
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つまりは、ツインピークスみたいな感じだ。
田舎で人がわさわさいて、一見それぞれ個性的なようでいて全員がほぼ全員、みな同じようにどうでも良くて、でもなんか不思議な映像や明媚な風光がまざったりして、突然はさまる微妙なエピソード、まあ落ちはついたけど、結局なんだったの? というところに近いものがある。
でも、すぐに読み終われるだけ、ツインピークスよりも優れている。
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