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なんかはてぶの上のほうに、山田風太郎の2文字が見えたので(面倒だから探さない)読んだら、ダンゲロス1969が、風太郎忍法帖のように下品でおもしろいと書いてあったので、ちょうどKindleが空になっていたので買って読んだ。
おもしろい作品の例にもれず、結局2日ちょっとで読んでしまった。
1968年から1969年の並行日本が舞台だ。並行日本には、魔人という特殊能力を持つ人間とそうでない人間がいる。
・まず、「魔人」と言う言葉のおかしみがあって、この時点でおれはこの作品が好きだ。
戦前戦中の日本の支配層は主に魔人だったが、GHQによってほぼ組織解体やパージされることで、どうにか生き残っている状態にある。
ちょっとした魔人中学生のいたずらによって千葉-東京ラインが壊滅状態になり、警官による魔人中学生暗殺が行われる。それが契機となって、魔人が地位向上に目覚める。
その目覚めは学生運動に波及し、時は1968年、安田講堂に立て籠もったプロ魔同、早稲田を根城にする革マジなどの派閥が生まれ、魔人解放運動が燃え盛っている。
話は、安田講堂に各派閥が終結し(ブンコ)、公安警察の魔人群との攻防戦を中心として展開する。
これ、おそらくおれが初めて読むラノベというジャンルなのだが、読んでいて、中学生に戻ったような気分に襲われた。それほど悪い気分ではないが、気持ちは悪い(内容ではなく、おれが襲われた気分のことである)。
まず、その学生運動パロディが中途半端に本格的なことに引っかかる。
誰がどう読もうが、それなりに理性的な雰囲気から(全然時代は違うが)プロ青同にしか思えないプロ魔同(東山君虐殺の頃に顕在化した催涙弾の水平撃ちが1969年に出て来たりしているくらいなので時間軸がむちゃくちゃなのは問題ないというか、そもそもこの時空に魔人はいないからどうでも良い)、(早稲田という地区にある大学という時点で)革共同以外の何者にも取れない革マジ(ただし、大衆武装路線からはマルじゃなくて中のほうだ)、公然活動路線の魔人インターが4トロで、ブンコはまんまブントだし、三本大学が日大なのに明大だったりして。デタラメな名前ではなく、いかにもそれっぽい元ネタが香るところのムダな凝りっぷりが想定読者層を理解不能なものにしている。
かと思うと、洗剤メーカー「ヨク=オトース」だの団子屋「ダゴン」なんていう名前がその瞬間だけ出て来るのだが、そんな調子でこれでもかこれでもかと無駄な言葉遊びやパロディが詰め込まれている。しかも全然笑えるわけでもない(スラプスティックコメディのようなのだが、まったく笑いどころがないのが驚きだが、かといってつまらないわけでは全くない。不思議な感覚なのだ。次々とネタが飛び出しては通り過ぎて行く疾走感が楽しいのかな?)。10個撃てば2個は当たるわけで弾数が多ければ多いほどくすぐられる道理だし、実績があるから残り8発もおかしみを感じられるわけだろう。
とにかく読んでいて、アーニーという英語遣い(英語は武道と等しい)が、永井豪が描いた超革中(学生運動パロディという共通点のせいだな)の鏡明の姿で目に浮かぶし、全然記憶に残っていないのだが、筒井康隆の俗物図鑑の表紙がちらちらするわけだ(多分、立て籠もった異形の魔人群という点と、おそらくまったく役に立たない異能力が闘争とうまく噛み合う点だと思うのだが、何しろまったく覚えていないのでわからん)。
しかも、むやみやたらと言葉遊びが疾走していくのに、ちゃんとそれぞれの無駄に下品な能力がきちんと噛み合って物語を構成している計算力というか物語の合目的性があって、なるほどそう来たか感(つまりSFの王道だ)まである。能力の掛け合わせで特に感心したのがあったのだが、読み終わった瞬間にきれいさっぱり忘れてしまった。
多分、作家は書いていて楽しかったのではなかろうか。で、読み手のこちらはその楽しさで楽しめたような気がする。いずれにしても、おもしろかったのは間違いない。
どうでも良い言葉遊びではあるが、一か所、非常に気になった点があって、革マジの幹部が逃げ出してそのまま大衆の雲に消えるところがあるのだが、そこは「闘争から召還」という言葉を使って欲しかった。
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