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アッパスキアロスタミの映画を観ていて、人生にはオリーブの林が必要なのだなと感じるところがあった。
それで6年ほど前に樹を置ける場所が確保できたので、オリーブの木を2本買った。2本あれば林には十分だ(字面上は)。
で、運ばれてきたオリーブを見ながら、実はなるか? と聞いたら花屋のおっさんは、え、実を生らすつもりだったんですか? と聞き返してきたので、どうも単に林にしかならないのだなと気落ちした(とはいえ、あまり期待していなかったので、そこまでだ)。どうも実を生らすには種類も変えたほうが良いらしいが、同じ種類だったので、もとから花屋にはそういうつもりはなかったのだろう(し、おれも収穫したいというようなことは何も言わなかったな)。
最初の年にはスズメガのすさまじくでっかな幼虫が出てきてびっくりしたり、テントウムシみたいなオリーブの葉っぱを汚く凸凹にするやつが出てきたりで驚いた。
常緑樹だから葉っぱはつきっぱなしだと思ったら、初夏を過ぎたあたりからばんばん黄色くなって葉が落ちる。全然常緑樹じゃないじゃんとかいろいろ学ぶこともあった。
どんどん成長して2年目には花が咲くようになった。おや、花が咲くってことは実がなるってこともあるのかな? と思っていたら、5月中旬の大風で全部吹き飛ばされてしまった。次の年には5月中旬の大雨で全部流されてしまった。
どうも、東京の気候と買ったオリーブはタイミングが合わないようだなぁと4年目くらいにも全部吹き飛んだ花を見ながら考えたものだ。というか、5月に大風と大雨が来ると意識するようになったのはオリーブのおかげだ。それまでは全然、そんなことは気づかなった。
どこからやってきたのかハサミムシが土の上にいたり、しっかりアリが樹の上をちょろちょろしたり、いないようでも虫が出てくるのもおもしろい。というか、スズメガはそのあと3回ほど来た(来ない年もある)。手榴弾のような糞とか、先っぽが2枚くっついた葉とかで見分けられるようになった。
で、今年だ。
なぜか大風が早めに来て、結構長いこと花が咲いている。時々小さな虫が飛んでいるのも見た。で、大雨がなかなか来ないなぁと思っていたりした。
とはいえやはり自然は毎年同じことをする(東南風が来ると孔明が確信している道理だ)。やはり大雨が来てきれいさっぱり花を流してしまった。
そんなある晴れた日、なんか緑の丸いものがついているのに気付いた。虫の卵か? と思ってみたら、実だった。飛び出した茎の先にぽいっとなっている(6月1日のことだ)。
(こんなふうに生るとは知らなかった)
おや、と思って数えてみると5つあった。もう1本の木にも同じく5つ。
なるほど人生はオリーブの林で、実のなる年もあるということかとなんとなくうれしくなる(食えるとは思えないが、せっかくだから鳥に食われずに熟すところまでいったら塩漬けにしてみようとか考えるが面倒だからやらない可能性のほうが高い)。
しかし1か月たって、それなりに大雨も降れば風も吹くが、一度なった実は飛ばされも流されもせずに成長し続けていておもしろい。
(結構大きくなった。というか1か月たっても熟して色が変わったりはしないのだな)
今日気づくとどこからやってきたのか小さなカマキリがいた。
これも不思議だ。飛んできたのだろうか?
人生には謎がつきものだが、これもオリーブの林と共に生きているからならではというものだ。
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