著作一覧 |
アップリンクでジャームッシュのパターソン。
ここはおれの備忘録なのですべての筋を書く。
月曜日。ベッドの中の二人。1人はちょっとエキゾチックでたぶんインド系の人。起きると、相手(ちょっと間延びした顔の男だが、角度によってはときどき男前になる)に、双子を産む夢を見たと語る。あなたも双子好き? ああ、好きだよ。
男、制服のようなものを着て家を出る。バスの運転席に座り、メモ帳に詩のようなものを書いている。同僚か上司のようなインド系の人間と話す。バスが出る。双子が乗っている。パターソンは男の名前であり、この町の名前らしい。
腕時計がアップになりくるくる回る。
男(というかパターソン)、家の前で郵便受けを開ける。郵便受けは朝はまっすぐだったのに、妙に倒れかけている。パターソン、郵便受けをまっすぐに直す。
晩御飯の話をする。インド系の女性のほうが、カップケーキが人気だったことを話す。
奥さん、カーテンを作ったらしい。白地に黒いくるくるがたくさん。
パターソン、犬を連れて散歩へ出る。バーへ入る。ドクと呼ばれるバーテンダー。ビールを注文して飲む。
火曜日。ベッドの中の二人。
パターソン、制服のようなもの着てを家を出る。バスの運転席に座り、メモ帳に詩のようなものを書いている。同僚か上司のようなインド系の人間と話す。バスが出る。双子が乗っている。
腕時計がアップになりくるくる回る。
パターソン、家の前で郵便受けを開ける。郵便受けは朝はまっすぐだったのに、妙に倒れかけている。パターソン、郵便受けをまっすぐに直す。
奥さん、服を作ったのかな。白地に黒いのがたくさん。
パターソン、犬を連れて散歩へ出る。バーへ入る。ドクと呼ばれるバーテンダー。ビールを注文して飲む。
(ちょっと気を失いかけてくる)
水曜日。ベッドの中の二人。
パターソン、制服のようなものを着て家を出る。バスの運転席に座り、メモ帳に詩のようなものを書いている。同僚か上司のようなインド系の人間と話す。バスが出る。双子が乗っている。
(ほぼ気を失いかけてくる。いつがいつかまったくわからなくなってくる)
腕時計がアップになりくるくる回る。
パターソン、家の前で郵便受けを開ける。郵便受けは朝はまっすぐだったのに、妙に倒れかけている。パターソン、郵便受けをまっすぐに直す。
奥さん、自分は音楽の才能があるからギターを習いたいという。教習用DVD込みで200ドル。買ってもいい? よくなさそうではあるが、買っても良いことになる。
パターソン、犬を連れて散歩へ出る。バーへ入る。ドクと呼ばれるバーテンダー。ビールを注文して飲む。
木曜日。ベッドの中の二人。奥さんは全裸。
パターソン、制服のようなものを着て家を出る。バスの運転席に座り、メモ帳に詩のようなものを書いている。同僚か上司のようなインド系の人間と話す。バスが出る。双子が乗っている。
腕時計がアップになりくるくる回る。
パターソン、家の前で郵便受けを開ける。郵便受けは朝はまっすぐだったのに、妙に倒れかけている。パターソン、郵便受けをまっすぐに直す。
パターソン、犬を連れて散歩へ出る。バーへ入る。ドクと呼ばれるバーテンダー。ビールを注文して飲む。
金曜日。ベッドの中の二人。
パターソン、制服のようなものを着て家を出る。バスの運転席に座り、メモ帳に詩のようなものを書いている。同僚か上司のようなインド系の人間と話す。バスが出る。双子が乗っている。
腕時計がアップになりくるくる回る。
パターソン、家の前で郵便受けを開ける。郵便受けは朝はまっすぐだったのに、妙に倒れかけている。パターソン、郵便受けをまっすぐに直す。
奥さん、ギターを取り出して、線路は続くよを歌う。うまいじゃないか。DVD見て練習したから。まだここから先は練習していないの。
パターソン、犬を連れて散歩へ出る。バーへ入る。ドクと呼ばれるバーテンダー。ビールを注文して飲む。
・以上の繰り返しの中に以下のエピソード
・バーで、別れ話と納得しない男のエピソード。最後、男は銃をこめかみに当てる。パターソンが素早く飛び掛かり銃を奪う。ドクが銃を取り、男に向けて撃つ。おもちゃだよ。
・オープンカーに乗ったチンピラ5人組。散歩中のパターソンに向かって話しかける。その犬はブルドッグか? パターソン、びびる。高価な犬だから、盗まれるようだぜ。パターソン、びびる。気をつけなよ。パターソン、びびる。車、走り去る。
・唐突にパターソンの家。扉がいきなり開いて犬が飛び出してくる。郵便受けの柱に抱き着き、倒す。家の中に走り込む。
・ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ。カーロス・ウィリアムズ・カーロス。
’・詩を書く子供との対話。韻をうまく踏めないの。僕も好きではない。読むとなんか韻を踏んでいて、それをパターソンが指摘する。
・女性から聞いた詩だ。奥さん目を剥く。いや、子供なんだ。
・奥さん、パターソンに向かって、あなたは素晴らしい詩人なんだから、ノートに書いておくだけではだめ。バックアップを取りなさい。コピーすること。わかった、休みになったらコピーする。
土曜日。ベッドの中の二人。
今日は休み。奥さんはカップケーキをたくさん作ってバザーへ売りに行く。
パターソン、箱に詰めるのを手伝う。車に詰め込むのを手伝う。
パターソン、地下室で詩を書いている。奥さんを賛美する詩。
これまでなかったことなのだが、うまく書けたのか、それとも他の理由からか、ノートを持って上へあがる。
奥さん、カップケーキが売れに売れて260ドルくらいになったと喜んでいる。成功を祝って、映画を観に行きましょう。
ドクターモローの島。
戻ってくると、床の上にゴミクズが散乱している。パターソンが置き忘れた詩のノートを犬が粉々に粉砕したのだ。奥さん、犬を叱る。ガレージへ閉じ込めましょう。
日曜日(だと思う)。
パターソンと犬。犬に向かって、パターソン、「お前なんか嫌いだ」とぽつりと言う。
奥さん戻って来て、ガレージから犬を連れだしているのに驚く。
パターソンが落ち込んでいるので、1人にしておこうとする。いや、僕が散歩してくる。パターソン、外に出る。
パターソン、公園のベンチに腰かけていると、永瀬正敏登場。スーツにネクタイ。ふけたな!
ウィリアムズとでっかくカタカナで書いた詩集を読み始める。パターソン、気になってちらちらとみる。
あなたはこの町の住人ですか? 私はウィリアムズが好きです。ウィリアムズはこの町の出身ですね。あなたもこの町の人ですか?
そうです。ギンズバーグもこの町の出身です。ウィリアムズは町医者でもあったのです。
あなたも詩人ですか?
いえ、私はバスの運転手です。
ウィリアムズも町医者でした。実は私も詩を書きます。
どんな詩ですか?
日本語の詩です。翻訳はしません。詩の翻訳は、コートを着てシャワーを浴びることです。
二人、笑う。
永瀬去る。
パターソン、ベンチに腰掛けたまま。
永瀬戻る。
あなたにあげましょう。まだ何も書いていないノート(表紙はカラフルな雲だったかな)をパターソンへ渡す。
-----
これはもしかしたら、これまで観たジャームッシュの中で最高の作品かも知れない。途中何度も意識を失ったが。車に乗った犬について警告する連中のシーンは好きだ。最後の唐突な天使の登場も素晴らしい。まさか天使が老け顔眼鏡の日本のスーツ姿のおっさんとは考えもしなかった(出てくるのはタイトルクレジットでわかったが、そこまで出てきていないことは気にもしていなかった)。
ジェズイットを見習え |