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おもしろかった。
なんかタイトルが1語なので、つまらないディックだと思い込んでいたが、ザップガンなんかと同じく、おもしろいディックだった。
レコード会社のプロデューサ、録音技師、プロデューサの妻のネアンデルタール人の歌の録音の話と、巨大シミュラクラ製造会社に勤める弟、零細シミュラクラ製造会社に勤める兄、行動力があって弟から兄へ乗り換える奥さんの家族劇、音楽家コンビの自分探しの旅の話(嘘だな)、たった1人で火星移住を推進して国家と闘うアウトロービジネスマン、マンションに住む権利に汲々としているが決して悪い人ではない今の言葉でいうところのリベラル派の先生、大統領夫人と秘書官、国家の乗っ取りを企てている巨大シミュラクラ製造会社の経営陣、同じくその仲間の製薬会社、製薬会社の陰謀により失職しかけた精神分析医、念動力でピアノを弾く天才音楽家、秘密警察長官とその子分、謎の宗教活動家と信徒といったグループが個別に動きながらときどき交錯して内乱になって良かったね、という物語。全然、おちがついていないので失敗作じゃないか? とも思う。回収すること考えずにばんばん設定と人物を膨らませて面倒になったのかも知れないというか、人気が取れずに打ち切られたような感じでもある(もし雑誌連載だったら)。
ただ、ディックのおもしろい作品の共通の、社会の底辺にいる落伍者が、社会の頂点にいる人とその地位を巡る陰謀に巻き込まれて大活躍する、というパターン(まあ、小説に娯楽を求める人が好きそうな設定だ)のバリエーションにはなっているので、読んでいる間は楽しめた。
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