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三体がおもしろかったので、本格SFを読んでみるかと思っていたら、岸本さんがクラークといえば楽園の泉というようなことを呟いていたので
ていうかそういえば『ふわふわの泉』ってハードSFだよね、という話がピンと来るかどうかだよなぁ、とか考えていて、そうかクラークの(そっち方向の)代表的作品としてまず『楽園の泉』だよな、ということを今頃になって思い出すなど
— きしもと (@ksmakoto) August 20, 2019
Kindle版の権利を買って読んだ。
アマゾンサイトの説明も何も読まずに白紙状態で読み始めたもので、最初いきなり古代インド(だと思って読んでいたらどうもスリランカらしいが)の王様が作り上げた空中庭園の話が始まって、はてこれはなんだと思いながら読み進める。
と、いきなり26世紀くらいに話が飛んで、インドのあたりの引退した政治家の話になり、科学系のTVキャスター、古代文化研究者、小男(という観察が散々出て来くるのだが、意味があることが最後になってわかった)の建築家が訪問してくる。さっぱりどういう話かわからないままに読み進めると小男があたかも『S・カルマ氏』(だと思って書いてみたが、ちょっとあやしいので調べなおすとS・カルマ氏ではないみたいだが、山手線のホームからホームへ歩いて行って戻って来る男)のような行動を取る。
というところから、宇宙エレベーターにかける小男の野望の物語が始まるのだった。宇宙エレベーターで野望といえば、セルカンだが、なるほど、本書を読んでどうしたとかja.wikipediaにも記載されているなぁ。
短い断片から構成される不思議な小説で、資金調達の話あり(ここで出てくるアラブや火星の首長たちが良い味を出している)、古代の王様の話があったりするが、ほとんどの場合、エピソードの積み重ねなので、それでどうなったや、なぜそうなったかについては、何も書かれていないのがおもしろい。なぜ、王様は見るのが大変なところに侍女たちの画を描かせたのか? (階段があるから実は見えるというどうでも良いことが書いてあるが、坊さんたちが目の前を向くと邪教の象徴としていやでも目に入って不快になるだろうから、とかなのかなとかそこは残されていない記録なので、語ることはできないというこの作者の作法なのだろう)
最初の建設中の事故のくだりでは、敵対する天才天文学者にして高僧のアシスタントのテロリズムのようであり(が、その後の活躍に触れた箇所もあるので、少なくとも実行犯として捕まったわけではなさそうなので違うのかなぁ)、その事故が経緯で金色の蝶々が飛び立って土地問題が解決したりするのだが、そこで坊さんたちが舞台から退場すると、建設の苦労話に突入していく(こうやって作中の事実だけを書くと、さっぱり意味がわからないくらいに、てんでんばらばらな事象が組み合わさって構成されている)。
最後、小男は事故で隔絶された太陽研究者の一群の救出に向かってエレベータを昇って行く。(ここからは普通に時系列通りに進行するドラマとなる)
しかし2度目の挑戦であったが、小男の名前は残らないという終わりを迎えるが(冒頭で、引退した政治家は、小男の行動原理は自分の名を残すことにあるのだろうと観察している)、それは些末なことなのだった。
なんか読後、非常な爽快感というか達成感のようなものを感じる良い作品だった。何かを作るために真剣に立ち向かう人の話はいずれにしても感動的なものなのだ。
ここでは単位はミクロンだが、30年が経過してナノテクノロジーとなり、同じようにアルファケンタウリのほうから電波を受信し、宇宙人がなぜナノテクノロジーに脅威を感じるかとか考えると、なるほど、三体の仕掛けの幾つかはここにあるのだな、と思わなくもなかった。(が、興味の向きが全く異なるのでそれはそれこれはこれだ)
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