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日々の破片

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2021-02-20

_ リベルテ

ユーロスペースで、アルベルト・セラのリベルテ。

友人からばかみたいに混むはずだから水曜日の真夜中(というか木曜日になったらすぐ)にチケットを購入せよと言われていたが、ネコに眠らされてしまって、結局木曜の朝に予約しに行ったら、3人くらい(その友人も含むのだろう)しか買われていなくて、なんと大袈裟なやつなんだと思いながら購入したが、当日行ってみたら本当に混んでいた。

最初に能書きを垂れる人が出て来て、映画の説明を始める。はて? と思ったら、ちょっと特殊な上映会だったのだな。

カメラを3台使い、基本的に役者に対して指示をせずフィルムを回しっぱなしで後から編集で頑張る映画で、音について注意せよと説明される。役者も基本的に素人で、最初に喋り出す男は、Facebookで募集されたやつで声が良いから選ばれた。確かに声が良い。

音は不思議なほどステレオ感があるだけではなく、驟雨のシーンではまさに頭上から雨が降り注いでくるような音響でびっくりした。なんちゃら4Dみたいなやつより遥かにシズル感がある。

画面は終始暗くて何かがいろいろと蠢きまくる。最後、夜明けが近づいてくると薄明が美しい。太陽が出るのか? と思わせられたが、結局出ない。確かにそういう内容ではあった。

馬車の中で貴族たちが会話する。ダミアンの処刑について語られる。革命の足音が近づいているのかな? 真の貴族の頽廃の美学を若い者に教えてやりましょう。

内容的には、最後の晩餐やソドム120日に近い。

最後の晩餐 HDリマスター版 [DVD](マルチェロ・マストロヤンニ)

ソドムの市 <HDニューマスター版> ~制作40周年記念~ [Blu-ray](パオロ・ボナッチェッリ)

ただ、圧倒的に異なるのは、大筋以外は何もないことだった。空疎と言えなくもないし、意外の美があると言えなくもない。だが、映画かどうかと聞かれたら、おれが見たい映画ではない(パゾリーニとかも好きではないから、そういう点ではおれにとっては同じカテゴリには入るかも知れないけど、ジャンルは異なる)。

役者が素人(ドイツから招待された公爵役のヘルムートバーガー(まだ生きていたのか)は当然プロフェッショナルだが)で演技の指示をしないというのは、この異常な状況にどう反応するのが正しいのか作家本人もわからないからではないか? 後から編集でどうにかするというのは、役者の反応が事前に見えない以上、どういうシーンとなるかは予測不可能だからかな? とか考えながらみる。

死ぬほど退屈なシーケンスと、何がなんだか映像が読めないシーケンス、気分悪くなるシーケンスなどが延々と入れ替わりながら時間が流れる。

おもしろくなくはなかったが、長い(2時間半)映画としては、だめな作品だと思った。

比較にすらならないが、全体的に暗い中で物語があるのかないのかわからないままえらく長い時間が流れる映画で、ここ10年くらいに観たのはペドロ・コスタだが、同じように素人役者を使っても、全然違う。才能というのは残酷なものだなぁ。

ただまあ、映画史に何か違うものを残したいという作家の意思はわかった。


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