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小山さんが異様に推しているので、どうもポスターの絵柄はいまいち好きではないが観に行った。ら、抜群におもしろかったし、いろいろ我が身に感じるところもあり、実に良い体験だった。
映画館は良くわからないので、新宿のカドカワのアニメシアターというのを選んだ。緊急事態宣言中とはいえ(6/11から延長になった)相当混んでいてというか、選んだ会は満席だった(とはいえ市松模様売りなので実際のキャパの半分なわけだが)。
開場までの間にパンフレット(最近はプログラムとは呼ばないのだな。以前はチラシがパンフレットで、購入するのはプログラムだった覚えがあるのだが)を読もうとしたが、コンタクトをしているので実に読めない。
それでも、ポンポさん役の声優が書いている、見た目は子供だけどそれには捉われずに40代のバリキャラを想定しろと言われて納得したとかいうのだけは読み取れた。
なるほど、と、記憶をたどって、なんとなく岩波支配人の高野悦子(プロデューサーではなくディストリビューターだが)を頭の中でポンポさんとして想定する(このギャップが見ている最中、えらくおもしろかったがそれは別の話)。
おまけマンガが配布されたのだが後編となっていて残念な気持ちになる。が、こちらも読めない。
始まると良い感じで歌と踊りが始まってスピード感が抜群で気分良い。
映画会社の下働きの熱心なメモ取り小僧が、30秒CMを任せられる。フィルムを素材に30秒にまとめていく。存在しないカットを入れて観ている側に錯誤と想像力の刺激を与える。すごく楽しそうで、観ていて楽しい。
できが良かったので、60秒も任せられる。
映画のCMといえば、未だにゴダールの探偵のCMが忘れられない。まったく本編と関係なく、ハードボイルドスタイルの男がベッドの中の女に話しかける。「ゴダールの探偵を観に行こう」「いやよ」「行こう」「いやよ」男、いきなりピストルで女を撃ち殺す。観客のほうを振り向いて「ばかな女ですね」
という話とは別に、女優志望のアルバイト少女の話が錯綜し、モンタージュされる。
なるほど映画の映画だけにいろいろな技法が入り込んでいておもしろい。というか、実写と違ってアイリスイン・アウトが自由自在でそれもおもしろい。というかスピード感が抜群だ。
小僧は初監督作品を与えられるという話と並行して小僧の学生時代の知り合い(すれ違った程度)が出てくる。見た目が異なる位相なので敵役なのかなと思うと全然違った。
かくして、大物俳優(マーロンブランドみたいなものだな)、新人女優(ナタリー・ウッドみたいな名前なので小僧のジーンはディーンなのかと思ったが別にプラネタリウムとかは出てこないので関係なさそうだ)、プロデューサーのポンポさん、その他のスタッフがからみあって物語が展開する。
羊なら皆殺しの天使かウィークエンドだが、山羊だから違うな。
アルプスが広がる。おれが喚起されるのはサウンドオブミュージックの冒頭のマリアがくるくるするヘリコプター撮影(だと思う)が、おそらく異なる引用だろう。
というか、そもそもこの作品の中の映画の映画はニューシネマパラダイスだが、おれは観ていないのだった。イタリア人の映画の映画だとこんなに愛し合ったのにだな。
と、作者とおれの時代ギャップが大きくて引用はほとんどわからないわけだが、そんなことはどうでも良いほど映画がおもしろい。
で小僧は自分の映画を獲得するためにただ1個の制約だけを遵守することにして、それ以外のすべてを薙ぎ倒して行く。
冒頭の30秒CMを作る経験がここでさらに発展し、新人女優の大事な思い出だろうが脚本家の設定だのをばっさばっさと斬りまくる。
わかる。
プログラムを作るのと同じだ。守るべきアーキテクチャ以外は、どれだけ良く書けているコードだろうが、最後の段階では単なる素材でしかない。素材を選別するのは楽しい。
しかし、ここまでクリエイティブ側の視点で押し通すのはある意味すごいが、あまりに狭いなぁと感じていると、学生時代の友人が別の視点、つまりビジネス側の視点を映画に注入(もちろんプロデューサーのポンポさんはビジネス側なのだが、妖精のようなものなので側を持つわけではない)するために活躍することになって、なるほどうまいものだと感心した。しかもここでも不愉快なやつは出てこない。不愉快な言動を取る連中とそれをやり込めるカタルシスのようなものも用意されているが、その連中であってもその論理からは全く正しいから、不快なわけでも悪役というわけもない。
そして実に気分よく終わる。
実におもしろかった!
[まとめ買い] 映画大好きポンポさん(杉谷 庄吾【人間プラモ】)
マンガが原作らしいが、絵柄が好きではないというのはどうにもしょうがないな。
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