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日々の破片

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2021-10-30

_ マドモアゼル・モーツァルト

池袋のブリリアホールでマドモアゼル・モーツァルト。

子供が先々週くらいに観に行ってえらくおもしろかったから千秋楽に行くからお前も来いというので、原作の福山庸治も好きだし観てきた。

始まって驚いたのは、日本発のミュージカルとは思えぬくらい音楽、劇、演出(役者は当然のこととして)が完璧なことで、もちろん主となる音楽はモーツァルトの換骨奪胎なのだが、合間をつなぐ音楽や明らかにオリジナルな歌も本物のミュージカル(たとえばアンドリュー・ロイド=ウェバーとか)みたいだ。

幕間に一体誰が音楽を作ったのかとプログラムを見てみたら小室哲哉と書いてあって、なるほど本当に才能ある音楽家なのだなと感心した(リアルタイムにTMネットワークとか聞いたことがないどころか今に至るまで聞いた記憶がないので名前しか知らない)。

物語はモーツァルトの遺体を数人が取り囲んでいるところでコンスタンツェがみんな出て行ってと追い出すところか始まる。すると遺体を覆う布の下から元気な女の子が出て来て、過去に戻る。この間、2階部の壁にはめ込まれた人形たちがすでにモーツァルトのオペラの人物たちのようだ。

キラキラ星を弾いているが、すぐに変奏が始まり、それを聴いたレオポルトが(というのは、説明なくてもわかる程度にはモーツァルトのことは知っている)なんだ今のは? と大声を上げ、弾いていた子供が謝ると、違う違うそれで良いのだ、問題はこんな才能があっても女の子じゃだめなんだ、そうだお前は男になれということで神に愛されているのだからヴォルフガング・アマデウスと名乗ることを命じられるシーンとなる。全然相手にされない可哀想なナンネル。

パリをすっ飛ばしてウィーンでまるでリストのように女性に囲まれながらクラヴィアを弾いているところに見るからにサリエリ登場。ウィーン一の作曲家です。おお、私は世界一の作曲家です、とお互いに紹介しあう。ここでサリエリから作品を誉められたモーツァルトはパパと呼び、自分の音楽を愛する人は皆パパだというようなことを言い、別れ際に頬にキスをするのでサリエリは疑惑を持つ。

ザルツブルクはすっ飛ばしているので不快な大司教は出てこないし、パリもすっ飛ばしているので母親との苦難の歴史もないので、すべてが快調である。

一方、ウェーバーさんは最初は姉のほうについてぐにゃぐにゃ言っているが、コンスタンツェが一方的に惚れ込んだこともあって、すぐさまコンスタンツェとの結婚という話となってしまう。

その間に、サリエリの恋人のオペラ歌手がサリエリが抱いたゲイ疑惑を確認するために近寄って来たり(この歌手、クラシカルな歌も歌えて良い)いろいろあるが、とにかく結婚してしまうのだが仕事にかこつけて床入りは延々と先延ばしされてしまう。

フランツという名前のくそまじめな弟子が出てくるが(ジェスマイヤーかな? と思ったらジェスマイヤーだった。名前は知らんかった)。

フィガロの序曲。

で、結局ジェスマイヤーとコンスタンツェは子供を設けるが、(途中、フィガロの結婚も挟まる)それを自分の子供としてモーツァルトは発表する。ケルビーノがモーツァルトなのだった。が蝶々はまだ飛び続ける。

ド派手なダポンテが出て来て、ドンジョヴァンニの台本を渡す。カサノバってやつと知り合ったのだが、こいつに金の匂いを嗅ぎつけたんだ。で、ドンジョヴァンニはそいつがモデルだ。で、最後はどうなる? 神に逆らったんだから当然地獄行きだ。

当然地獄行きというセリフがモーツァルトに襲い掛かる。

で、史実通りにレオポルト逝去の報が届く。

通俗史だと、騎士長の石像がレオポルトなのだが、ここではドンジョヴァンニがむしろ父親で(娘を息子にしてしまうという)神に逆らった罰で地獄行きとなる。

1幕終了。

2幕、いきなり女装してモーツァルト登場。コンスタンツェが頭がおかしくなったの? と驚く。父が死んだんだから、もう男である必要ないじゃん! サリエリと結婚しようかな(これはこの時点ではないが)、とモーツァルトは屈託がない(1幕の終りからはえらい変わりようだが、親父を地獄へ落としたから自分は自由になったのかな)。

で、本来モーツァルトが呼ばれていたサリエリのコンサートへ本来のエリザとしてコンスタンツェと共に行く。

モーツァルトが来なくてがっかりするサリエリだが、モーツァルトにはあなたの音楽のような勇壮な作品は作れない、素晴らしい、とエリザに言われて喜ぶと同時にエリザに一目惚れする。かくして花束を持ってモーツァルト宅へ訪問し、着替えたモーツァルトから従妹のエリザはコンスタンツェの実家にいると聞かされて帰る。

コンスタンツェに泣いて説教されてモーツァルトはモーツァルトとして生きることを承諾し、サリエリにエリザとして永遠の別れを告げに行く。

サリエリが楽譜をモーツァルトに渡して君のために書いた、弾いてくれと頼む。私は弾けないわ。いや、その手はクラヴィアを弾く手だ。

モーツァルトは弾く。悪くない。でもこうしたらどうかな? と次々と恋する男心になぞらえて変奏していく。トルコ行進曲付きピアノソナタじゃないかな(それとは別に、一番弾きやすいハ長調のピアノソナタもがんがん利用されているが、おそらく一番弾きやすい=一番みんなが知っているということかも)。サリエリは怒りだす。

そして二人は了解する。

素晴らしい音楽にのって、サングラスのいかした男が登場する。シカネーダだ。シカネーダは大衆のための音楽とか無理と渋るモーツァルトを口説き落として素敵な魔笛に取り掛からせる。

モーツァルトは命を削って魔笛に取り掛かる。これは良い。レクイエムは手垢が付き過ぎているし、実際に最高傑作は魔笛なのだからはるかに落ち着きが良い。

助手の自分は作曲家になれるか? と聞くジェスマイヤーにとりあえず作曲してみなきゃわからん、と答えるモーツァルト。なんか漫画家とアシスタントみたいな関係だな。

魔笛の序曲。

舞台にはフリーメーソンの三角。

シカネーダがパパゲーノ(史実通りだ)となり、パ・パ・パをほぼ全曲やる。こうでなくては。確かに、間違いなく、パ・パ・パこそが最高だ(俺自身モーツァルトの曲の中で聴いていて思わず涙が出てくるのはパ・パ・パだからなぁ)。

ちゃんとタミーノ、パミーナ、ザラストラ、夜の女王なども出てくる。一人良くわからないのがいたけど、モノスタトスとも思えないしなんだろう?

力尽きて倒れたモーツァルトをシカネーダが見つけて家へ連れて帰る。息をしやすいようにと服をはだけて察するが無視する。

冒頭に戻って終了。

バレエシーンがいくつかあるがそれもちゃんとバレエになっているし、なんかものすごく良い舞台だった。

持っていなかったので原作をホワイエで購入。

マドモアゼル・モーツァルト(福山庸治)


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