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以前いただいたEngineers in VOYAGEの改訂版の「事業をエンジニアリングする技術者―フルサイクル開発者がつくるCARTAの現場」をいただいたので、大喜びでまずは追加されたまえがきと7章と8章を読んだ(実際には追記部分とかいろいろつまみ読みしたり、ついおもしろいのでまるまる読み返したりもしているが)。
(確かEngineers in VOYAGEについての感想を書いた記憶があるのに日記に見つからないので不思議に思ったらツイートして満足してしまったらしい。しょうがないので採録した)
前著でも感じたわけだが「通常の書きおろした文章とも違うビデオを視聴するような読みやすさがある一方、ビデオ的な一方的な語りに堕すこともなく、諸論点が浮き彫りに」なっていることが本書の一番の特徴だ。
技術書としては深堀はないかも知れないが(Howは想像で補うしかないわけだが)、What,Why,Who,When,Whereについてこれほど読みやすく、かつクリアで、本人ではなく読者目線で要点を浮き彫りにした技術書というのは他では見つからない。
この点についてはインタビュアーの和田さんと編集の鹿野さんが抜群だ。
もちろんそれが可能となるには、インタビューイが自分が語るべき内容を隅々まで理解して把握していることは大前提で、その観点からは、なるほどここに登場するエンジニアたちは自分の対象ドメインの事業を「完全に理解」しているのだろう。それがこの会社の強みには違いない。
7章はテレビCMのバイイングシステム化にまつわる苦労話。テレビという本物のマス対象の情報システムがどれだけデジタルではないかという話にも読めておもしろかった。
8章は明らかに白眉で、この章があるから、本書を買いなおす(または買い足す)意味がありそうだ。
8章は、VOYAGEというエンジニア集団企業と、CCIという普通の事業企業の合併によるシステム統合の苦労話がテーマなのだが、圧倒的におもしろいのは企業の方向の違いから来る行動様式の差異についての考察と、その解消のための苦労話だ。
この章を読むと、エンジニアは最初は「普通の事業会社」には入らないほうが良さそうに考えられる。そうではなくエンジニアが事業を回す会社で職業的な見方を養うのが良い。
端的には本書の「VOYAGE GROUP側には『考えながら喋る』ような人が多いんですが。一方、CCI側には『必要な情報をかっちり集めてから決める』という人が多いように思います」という発言が象徴的だ。
とにかくソフトウェアというかシステムというのは生き物で、こちらが想像もしない動きを間違いなくする。であれば、とにかく考えながら世話し続けなければならない。最初にその感覚を養えるかどうかというのはすごく重要なのではなかろうか。逆に言えば、前者から後者へ移行するのは退屈ささえ我慢すれば大した問題ではないように考えられる。が、後者から前者へ移行するにはまず決断と勇気と失敗を呑み込みながら前進する器量が必要(要はプレッシャーをスルーできる考え方)だが、それを後付けで持つようにするのはなかなかの難物ではないか?
・8章で読みにくいな、と思ったのは章扉裏の登場人物紹介で、VOYAGE側のメンバーについては事業部名があるからわかるのだが、CCI側のメンバーについては現職名しか書いていない点だ。現職名のCARTAというのは合併前から存在する元々の持ち株会社でもあるから、CCI側のメンバーではなくシステム統合にあたって持ち株会社から派遣されてきた管理者なのかと考えて読んでいて、なぜCCI側メンバーからの視点をこの人たちが話しているのか? と不思議に思った(途中で明言が入ってくるので、こちらの勘違いに気付けた)。
事業をエンジニアリングする技術者たち ― フルサイクル開発者がつくるCARTAの現場(株式会社CARTA HOLDINGS 監修)
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