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おもしろい伝奇小説だなと読んでいたら、スティームパンクならぬ水力風力パンク(ニュージャンル爆誕である)で驚いた。堪能した。
物語は李世民の2年に始まる。前日談として玄奘(三蔵法師)の兄が師匠の首を落とし、県令を自殺に追い込む話が語られる。
玄奘は天竺への旅の前に失踪した兄を探そうと自殺した県令の地へ来る。そこで新しい県令(超豪傑で実に気分の良い好漢)、従者のインド人(天竺から唐皇帝への献上物である象のおまけの象使いなのだが象が死んでしまったためにさあ大変、拷問死を逃れるために決死の脱走を遂げて今は玄奘の庇護下にある)などと謎の大寺である唐興寺を巡る大活劇が始まる(玄奘は文弱の徒ではなく、人間2人分は余裕である万巻の書(経典)が詰まった籠を背負って旅をしているため膂力もあれば足腰も強過ぎ。象使いはヨガの名人で骨をこきこき外しては凄まじい体術を使いまくる。
玄奘の命を付け狙う謎(ではなく県令の養女)の美少女、謎に包まれた行動を取る超美人の県令の妻(元は自殺した県令の妻なので再婚)、頭脳明晰な李世民とそれを取り巻く唐帝国の幹部たちが入り混じっての大活劇伝奇小説なのだった。
最後の寂寞はちょっと辛いが、続編を読ませるための仕掛けなのかな。
読んでいて、江戸川乱歩の娯楽長編を想起するのだが、おそらく物語内で繰り広げられる景観がパノラマ島や大暗室を思い出すからだろう。
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