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東劇でイル・トロヴァトーレ。
レオノーラはネトレプコ。どうもおれには1幕の歌はテンポではなくトーンがオーケストラと微妙にずれているような気がして少し気持ち悪かった。が、演技ひっくるめると、文句ないかなぁ。終幕は素晴らしい。幕間のインタビューではずっと子供が邪魔をするのだが、それが許されてしまうところが、どれだけメトにとっての看板として大事にされているかということだろう。
ホドロフスキーが出てくると拍手がやまない。脳梗塞からの復帰というのはすごいものだ。カーテンコールでは舞台上のアルミリアートがオーケストラに向かって手を振ると、団員たちが一斉に白いバラを投げつける。
思い出してみれば、おれが最初にイル・トロヴァトーレを観たのはホドロフスキーとクーラのロイヤルでの映像なのだが、ずいぶん好々爺っぽい感じはしてきたが、感情的には不幸のどん底をのたうちまわりながらも(身分も戦争でも文句なく勝者なのだが)堂々たるルーナ伯爵が実に似合う。
ヴェルディ作曲 歌劇 イル・トロヴァトーレ コヴェント・ガーデン王立歌劇場2002 [Blu-ray] [Import](カルロ・リッツィ(指揮))
マンリーコはヨンフン・リーで、3.11直後のメトの来日ではカウフマンの代わりにドンカルロスを演じたから、おれにとってこれが2回目になる。あの時は、声量が足りないと感じたが、これまた堂々たるマンリーコだった。4年たつのだな。
アルミリアートの笑顔はいつ見ても感じが良い。序曲では、左に向いてさわさわと振って、金管の斉奏の直前にぱっと正面を向いて大きく振る。
中尉は良くみる人(スパラフチーレを観た覚えがある)。好きだな。
マクヴィカーの演出は回転舞台をうまく使って場面転換をほとんど切れ目なく行う。兵士が集う中庭からバルコニーがある中庭に瞬時だ。
最終幕の演出は少し考えがあるようにみえた。地下牢のある塔の内側に忍び込んだ状況ではなく、塔の外側で始まり、ルーナ伯爵と共にレオノーラは去り、地下牢の内側でマンリーコとアズチェーナになる。レオノーラが外にやって来て、白い服に変わっている。
物語の奇怪さは演出のせいで随分と正されている。
神の沈黙としてとらえれば、この作品は不信心者の饗宴なのだ。
ルーナ伯爵は2代続いてジプシーを火あぶりにすることに躊躇はないが、まったくカトリックを重んじていない。2幕では修道院を襲撃することにもまったく躊躇がない。
レオノーラはマンリーコが生きているとしるや、ころっと修道院入りを取りやめるし自殺を選択する。
マンリーコと仲間たちも平然と修道院を襲撃する。
1人、アズチェーナだけが二言目には信心を口に出す。
そのアズチェーナの混乱をすべての中心に置けば、それほど奇怪な物語ではなくなる。
そして最後に唯一の信心者であるアズチェーナの復讐の成就で幕を閉じる。
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