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2D版字幕版を観に豊洲。
しかしなんだろうね? 技術の無駄使いのような、というかそもそもこれなんなんだろう? アラジンはまだわかるとして、出てくるのが相当本物そっくりの動物で息遣いやら毛並みのさわさわまで再現してあるのだが、げてものと言えなくもない。
いや、これこそ映画なのかも。驚異的な見世物という点でメリエス的だ。
その意味でいちばんおもしろくて印象的なのは唐突なガラゴのアップだった。
絶対にこれを見せたかったに違いない。
アニメとの違いはいくつかあって、時間的にも動作的にも無理があることはやらないので、「そんな鬣見たことない」とザズーが歌うと葉っぱで鬣を作って見せるようなところはないし、スカーの岩穴にザズーが骨で作った牢屋に閉じ込められていて、そこにティモンが逃げ込むシーンもない。あまりにもマンガだし。
しかし、マンガでしかないのにちゃんと(ではないが再現してあるものがある)。ラフィキの杖だ。冒頭であってもシンバを探しに行く旅(というか教え諭すところ)でも杖は持たない(杖持ったマントヒヒではマンガだ)のだが、最後の最後、シンバの加勢に行くところでは「古き友よ」と言いながら杖を取り出して棒術を使ってハイエナをなぎ倒す。子供が「古き友」の「古き」ってアニメ版の意味なのかと感心していたが、まあうまいダブルミーニングだし、確かに素手でマントヒヒがハイエナと闘うのは無理がある(投石くらいはできそうだが)ので、まありかな、というか観ていて不自然さを感じないのはもう完全にライオンキングの世界の中で観ているからだろう。おもしろい。
ラフィキがからむシーンでは他にも、シンバの抜け毛(アニメ版では単に匂っただけのような)の長いシーケンスが映画的におもしろい。
自分のことでおもしろかったのは、フンバが星空についてわりと正確なことを言ってティモンにガスの話が好きだとからかわれるシーンで、先日吹替をテレビで観たときはガスの意味がガスだけに抜けてしまったのが、字幕では意味がちゃんとわかることだ。本当におれの耳は音は追えるのに意味を追えないのだな。
スカーの用意せよはアニメよりもさらにかっこよい。
字幕版だけに観客も国際色豊かだったが、一番印象的なのはハクナ・マタタに合わせて立ち上がって踊り出した前の席の子供だった。立ち上がっても椅子の背の高さしかないからまったく鑑賞の妨げにはならないのだが、スクリーンよりもそっちのほうがよほどおもしろいのでどうしてもそちらを観てしまうから、その意味では鑑賞の妨げと言えなくもない。
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