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折りたたみ北京があまりにもおもしろかったので、買っておいた三体も読み始める。延々と読み続けて結局半日で完読してしまった。本当におもしろい、すごい作家だ。
文化大革命から始まるというのはなんとなく知っていたが、最初は内ゲバの様子から始まって(それなりに本筋に関係ある人物が出て来ていたことは後でわかるのだが、本筋そのものには関係ない)あれ? と思う間もなく主役のうちの一人の父親が鋼鉄の三角帽子を被せられてジェット機(跪かせて両腕を後ろから捩じ上げる)で吊し上げられたうえに殴殺されて、先に自己批判して文革側についた母親が発狂するとか、とてつもなくハードな描写で始まって驚いた。
もちろん、文化大革命がハードだというのは知っているが(たとえば『龍のかぎ爪 康生』)、ここまで書くかな? と思ったが、そもそも対象読者が既に文革を知らないこと、戦争を知らない子供たち状態なのだなと思い当たった。
結局のところ、人民解放軍の性質上、どの派閥であっても武器を容易に入手でき、武器を手にすれば革命の火花を散らせる道理だ。火花が燎原になるかは時勢と政治的な求心力による。あれよあれよという間に劉少奇が殺され、鄧小平は追放(この人事的なオルタナティブの確保と周恩来に対する信任(ただし娘は拷問死させているのでなんとも微妙だが、いずれにしても周恩来の器のでかさはただごとではない、というか国共合作も半分は周恩来だし)は、晩年の毛沢東の唯一の見識と言えなくもない)、毛沢東が病死してNo.2だと思っていた林彪はことをあせって脱落、四人組が最高権力を握ったのも束の間、盤石に見えた文革が人民解放軍の特殊部隊によって鎮圧されて(クーデタといえなくもない)終結という後からさまざまな資料で読まないと何がなんだか隣国のことなのにさっぱりわからないという状態で、まして本国の人たちもなんだか群盲象を撫でるのようなものなのだろう。
主人公の一人が謝罪させようと呼びつけた文革少女(その後は下放少年)の成れの果ての生活状態が就職氷河期世代に似ていなくもなくて本当にそうなのかなぁとかわからないことも多い(チェンカイコーとかまさに紅い小冊子を振り回しながら下放したりしてもチェンカイコーなわけだが、たまたま運が良かったということか?)。
私の紅衛兵時代-ある映画監督の青春 (講談社現代新書)(陳 凱歌)
さてそれから時代は流れSTEM教育でずんずん先進国になった中国の現在が舞台だ。
科学者が次々と謎の死を遂げる。
ナノテクノロジーの最先端を突っ走る主人公に軍から呼出しがかかる。呼出しに来た4人組は警官が2人と軍人が2人、そのうち1人の警官が絵に書いたような新宿鮫というか無頼派で、当然、科学者的には気に食わない。が、この警官の俗っぽさというか絵に書いたような無頼派っぷりが物語を和ませなくもない仕組みになっている。
という全世界の政府機関を巻き込んだ(呼ばれた先にはNATOや米軍の将校からCIAのエージェントまでいて、対立よりも協力という挙万国一致体制がひかれていて主人公は仰天する)敵(となれば、外宇宙からの侵略者ということに自然となるよな)との闘いの物語と、外宇宙からの侵略者の到来を待ちわびる人たち(ですら、3派に分かれて殺し合いをしている内ゲバ、待てよ、文革の内ゲバを冒頭においているのはそのあたりのニュアンスを入れたかったからなのかも)が宣伝用に作ったVRゲームのプレイ観戦が交互に進む。
折りたたみ北京に収められていた始皇帝の軍隊で構成したコンピュータが、ニュートンとノイマンに結び付くとは思わなかったが、こちらはさらに1桁兵隊が多かったのでスケールは桁違いだ。
それにしてもおもしろい。続きが楽しみ。
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